師導古典を学びたいすべての人に

呉子 / 論将篇

吳子曰:「凡兵有四機:一曰氣機,二曰地機,三曰事機,四曰力機。三軍之眾,百萬之師,張設輕重,在於一人,是謂氣機。路狹道險,名山大塞,十夫所守,千夫不過,是謂地機。善行間諜,輕兵往來,分散其眾,使其君臣相怨,上下相咎,是謂事機。車堅管轄,舟利櫓楫,士習戰陳,馬閑馳逐,是謂力機。知此四者,乃可為將。然其威、德、仁、勇,必足以率下安眾,怖敵決疑。施令而下不犯,所在寇不敢敵。得之國強,去之國亡。是謂良將。」

新字:吳子曰:「凡兵有四機:一曰気機,二曰地機,三曰事機,四曰力機。三軍之眾,百万之師,張設輕重,在於一人,是謂気機。路狭道険,名山大塞,十夫所守,千夫不過,是謂地機。善行間諜,輕兵往来,分散其眾,使其君臣相怨,上下相咎,是謂事機。車堅管轄,舟利櫓楫,士習戦陳,馬閑馳逐,是謂力機。知此四者,乃可為将。然其威、徳、仁、勇,必足以率下安眾,怖敵決疑。施令而下不犯,所在寇不敢敵。得之国強,去之国亡。是謂良将。」

書き下し

呉子曰く、凡そ兵に四機有り。一に曰く気機、二に曰く地機、三に曰く事機、四に曰く力機。三軍の衆、百万の師、張設の軽重、一人に在り、是を気機と謂う。路狭く道険しく、名山大塞、十夫の守る所、千夫も過ぎず、是を地機と謂う。善く間諜を行い、軽兵往来し、其の衆を分散し、其の君臣をして相怨ましめ、上下相咎めしむ、是を事機と謂う。車は管轄堅く、舟は櫓楫利く、士は戦陳に習い、馬は馳逐に閑る、是を力機と謂う。此の四つの者を知りて、乃ち将たるべし。然れども其の威・徳・仁・勇は、必ず以て下を率い衆を安んじ、敵を怖れしめ疑いを決するに足るべし。令を施して下犯さず、在る所寇敢えて敵せず。之を得れば国強く、之を去れば国亡ぶ。是を良将と謂う、と。

現代語訳

呉子は言う。およそ用兵には四つの要をなす仕掛けがある。第一に気機、第二に地機、第三に事機、第四に力機である。全軍の兵士、百万の大軍であっても、その張り具合や重心の置き方を決めるのはただ一人の将である。これを気機という。道が狭く険しく、名だたる山や大きな要塞では、十人が守れば千人でも通れない。これを地機という。間者をうまく使い、身軽な部隊を行き来させて敵の兵力を分散させ、敵の君主と臣下が互いに恨み合い、上下が互いに責め合うように仕向ける。これを事機という。戦車は軸受けが堅固で、舟は櫓や楫がよく利き、兵士は陣形の訓練に習熟し、馬は駆けることに慣れている。これを力機という。この四つを知ってはじめて将たりうる。そのうえで、将の威厳・徳・仁愛・勇気は、部下を率いて全軍を安んじ、敵を恐れさせ、迷いを断ち切るに足るものでなければならない。命令を出せば部下がそれを破らず、その将がいる場所には敵も攻めかかろうとしない。この人物を得れば国は強くなり、失えば国は滅ぶ。これを良将というのである。

解説

呉子は、戦の勝敗を決める要所を四つの機として整理します。気機は士気と全体の重心配分を一人の指揮官が決めるという話、地機は地形という条件が兵力差を覆すという話、事機は情報と工作によって相手の内部を分断するという話、力機は装備と訓練という日々の実力の話です。人の気持ち、置かれた場、情報戦、実力。この四つを押さえた上で、将自身が威厳・徳・仁・勇を備えていることが求められます。ここで言う機とは、力ずくではなく、そこを押せば全体が動く要のことです。現代の仕事に置き換えれば、メンバーの士気をどこに集めるか、自分たちに有利な土俵をどう選ぶか、外部環境の情報をどう読むか、そして地道な訓練と道具の整備ができているか、ということになります。優れたリーダーの有無で組織の存亡が変わるという最後の一句は、人材こそ最大の資産だという指摘でもあります。

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ