孫子 / 勢篇
故善動敵者,形之,敵必從之;予之,敵必取之。以利動之,以卒待之。
新字:故善動敵者,形之,敵必従之;予之,敵必取之。以利動之,以卒待之。
書き下し
故に善く敵を動かす者は、之に形すれば敵必ず之に従い、之に予うれば敵必ず之を取る。利を以て之を動かし、卒を以て之を待つ。
現代語訳
だから敵を動かすのが巧みな者は、態勢を見せれば敵は必ずそれに応じて動き、餌を与えれば敵は必ず食いつく。利益で相手を動かし、兵を備えて待ち受ける。
解説
相手を動かす原理を、利で釣って待つ、と単純に言い切っている。重要なのは後半で、動かしただけでは意味がなく、動いた先に備えがあってはじめて成立する点である。交渉や採用の場面でも、条件を提示して相手を動かすところまではよくやるが、動いてきた相手を受け止める準備がないことが多い。餌を撒く側の責任は、撒いたあとにある。なお、これは相手を騙す技術というより、相手が何を利と見るかを正確に読む力の話でもある。
この章句が説くこと
誘導利備え交渉読み
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・存心・大利も小義に換へず大利も小義に換へず、況んや小利を以て大義を壞るをや。貪る者は以て戒む可し。
-
『呻吟語』外篇・人情・禍は不意の中に防ぐ利は餘り無き處に算へ、禍は不意の中に防ぐ。
-
孫子・九地篇利に合いて動き、利に合わずして止まる。
-
『墨子』經說上平。惔然たり。利。是を得て喜べば、則ち是れ利なり。其の害は、是に非ざるなり。害。是を得て惡めば、則ち是れ害なり。其の利は、是に非ざるなり。治。吾が事、治まれり。人に南北を治むる有り。譽む。必ず其の行いなり、其の言の忻ぶなり。人をして之を督せしむ。誹る。必ず其の行いなり、其の言の忻ぶなり。譽むるに文名を以て告ぐるは、彼の實を舉ぐるなり。故。言なる者は、諸れ口能く之を出だして民するものなり。民は畫俿の若きなり。言や言と謂う、猶お名の致すがごときなり。且。前よりするを且と曰い、後よりするを己と曰う。方に然らんとするも亦た且なり。名の若き者は、君なり、若の名を以てする者なり。功は時を待たず、衣裘の若し。功は時を待たず、衣裘の若し。賞。罪は禁に在らず、惟だ害あれば罪無きも殆く姑し。上、下の功に報ゆるなり。
-
『呻吟語』内篇・修身・利に處して利を讓り、名に處して名を讓る利に處すれば則ち人をして君子を做さしめ、我は小人を做す。名に處すれば則ち人をして小人を做さしめ、我は君子を做す。斯れ惑ひの甚だしきなり。聖賢は利に處して利を讓り、名に處して名を讓る。故に淡然恬然として、世と忤らず。
-
『十善法語』巻第八・不貪欲戒世間ノ至テ愚痴ナルモノハ。猪カリヲ作ネハ獣ガ人ヲ害シ。漁ヲ作ネハ魚カ海中ニ充満シテ。船ノ渡海モ止ルヤウニ思フベケレトモ。サウデナイ。古語ニ東萊加租而海魚不出。合浦貪珠而璣蜂遠移トアル。天地生生ノ道ハ目ノコ算用デ知レルコトテハナキシヤ。史記ニ周ノ厲王利ヲ好ム。ソノトキ芮伯カ王ヲ諫テ。夫利百物之所生也。天地之所載也。而或専之其害多矣。夫王人者将導利而布之上下。者也。使神人百物無不得其極。猶日述惕懼怨之来也。匹夫専利謂之盗。王而行之其帰鮮矣トアル。