十善法語 / 巻第八・不貪欲戒
世間ノ至テ愚癡ナルモノハ。猪カリヲ作ネハ獸ガ人ヲ害シ。漁ヲ作ネハ魚カ海中ニ充滿シテ。船ノ渡海モ止ルヤウニ思フベケレトモ。サウデナイ。古語ニ東萊加租而海魚不出。合浦貪珠而璣蜂遠移トアル。天地生生ノ道ハ目ノコ算用デ知レルコトテハナキシヤ。史記ニ周ノ厲王利ヲ好ム。ソノトキ芮伯カ王ヲ諫テ。夫利百物之所生也。天地之所載也。而或專之其害多矣。夫王人者將導利而布之上下。者也。使神人百物無不得其極。猶日述惕懼怨之來也。匹夫專利謂之盜。王而行之其歸鮮矣トアル。
新字:世間ノ至テ愚痴ナルモノハ。猪カリヲ作ネハ獣ガ人ヲ害シ。漁ヲ作ネハ魚カ海中ニ充満シテ。船ノ渡海モ止ルヤウニ思フベケレトモ。サウデナイ。古語ニ東萊加租而海魚不出。合浦貪珠而璣蜂遠移トアル。天地生生ノ道ハ目ノコ算用デ知レルコトテハナキシヤ。史記ニ周ノ厲王利ヲ好ム。ソノトキ芮伯カ王ヲ諫テ。夫利百物之所生也。天地之所載也。而或専之其害多矣。夫王人者将導利而布之上下。者也。使神人百物無不得其極。猶日述惕懼怨之来也。匹夫専利謂之盗。王而行之其帰鮮矣トアル。
書き下し
世間ノ至テ愚痴ナルモノハ。猪カリヲ作ネハ獣ガ人ヲ害シ。漁ヲ作ネハ魚カ海中ニ充満シテ。船ノ渡海モ止ルヤウニ思フベケレトモ。サウデナイ。古語ニ東萊加租而海魚不出。合浦貪珠而璣蜂遠移トアル。天地生生ノ道ハ目ノコ算用デ知レルコトテハナキシヤ。史記ニ周ノ厲王利ヲ好ム。ソノトキ芮伯カ王ヲ諫テ。夫利百物之所生也。天地之所載也。而或専之其害多矣。夫王人者将導利而布之上下。者也。使神人百物無不得其極。猶日述惕懼怨之来也。匹夫専利謂之盗。王而行之其帰鮮矣トアル。
現代語訳
世間のひどく愚かな者は、猪狩りをしなければ獣が人を害し、漁をしなければ魚が海中に満ちて、船の渡海も止まるように思うだろうけれども、そうではない。古語に、「東萊で税を重くしたら、海の魚が出なくなった。合浦で珠を貪ったら、真珠貝が遠くへ移ってしまった」とある。天地の生々の道は、目先の算用で知れることではないのである。史記に、周の厲王が利を好んだ。そのとき芮伯が王を諫めて言った。「そもそも利は百物の生じるところであり、天地の載せるところである。それを独り占めすれば、その害は多い。そもそも人の王たる者は、利を導いて上下に行き渡らせる者である。神も人も百物も、その極みを得ないものがないようにし、それでもなお日々恐れ慎んで、怨みが来るのを懼れるのである。匹夫が利を独り占めすれば、これを盗と言う。王がこれを行えば、付き従う者は少なくなろう」とある。
解説
この章句が説くこと
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孫子・九地篇利に合いて動き、利に合わずして止まる。
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『墨子』經說上平。惔然たり。利。是を得て喜べば、則ち是れ利なり。其の害は、是に非ざるなり。害。是を得て惡めば、則ち是れ害なり。其の利は、是に非ざるなり。治。吾が事、治まれり。人に南北を治むる有り。譽む。必ず其の行いなり、其の言の忻ぶなり。人をして之を督せしむ。誹る。必ず其の行いなり、其の言の忻ぶなり。譽むるに文名を以て告ぐるは、彼の實を舉ぐるなり。故。言なる者は、諸れ口能く之を出だして民するものなり。民は畫俿の若きなり。言や言と謂う、猶お名の致すがごときなり。且。前よりするを且と曰い、後よりするを己と曰う。方に然らんとするも亦た且なり。名の若き者は、君なり、若の名を以てする者なり。功は時を待たず、衣裘の若し。功は時を待たず、衣裘の若し。賞。罪は禁に在らず、惟だ害あれば罪無きも殆く姑し。上、下の功に報ゆるなり。
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『長短経』大体昔者、周の厲王、利を好み栄公に近づく。芮良夫諫めて曰く「王室其れ将に卑からんとするか。栄公は専利を好みて大難を知らず。夫れ利は百物の生ずる所なり、天地の載する所なり。而るに或いは之を専らにせば、其の害多し。天地百物は皆将に焉より取らんとす、何ぞ専らにす可けんや。怨む所甚だ多くして大難に備えず、是を以て王に教うるは、其れ能く久しからんや」と。後に厲王果たして敗る。魏の文侯、御廩に災あり、素服して正殿を避け、群臣皆哭す。公子成父趨り入りて賀して曰く「臣聞く、天子は四海に蔵し、諸侯は境内に蔵す。其の蔵する所に非ざれば、火災有らずんば必ず人患有り。幸いに人患無し、亦た善からずや」と。孔子曰く「百姓足らば、君孰と与にか足らざらん」と。周諺に言える有り「嚢漏るるも儲は中にあり」と。是に由りて之を言えば、夫れ聖王は其の地を以て封じ、其の財を以て賞し、人と利を争わず。乃ち能く主道に通ず。是れ其の有に非ざるを用うる者なり。〕