孫子 / 勢篇
紛紛紜紜,鬥亂而不可亂也;渾渾沌沌,形圓而不可敗也。亂生於治,怯生於勇,弱生於強。治亂,數也;勇怯,勢也;強弱,形也。
新字:紛紛紜紜,鬥乱而不可乱也;渾渾沌沌,形円而不可敗也。乱生於治,怯生於勇,弱生於強。治乱,数也;勇怯,勢也;強弱,形也。
書き下し
紛紛紜紜として、闘い乱れて乱すべからず。渾渾沌沌として、形円くして敗るべからず。乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は強に生ず。治乱は数なり、勇怯は勢なり、強弱は形なり。
現代語訳
入り乱れて戦っていても、内側の秩序は乱れていない。混沌として見えても、態勢は円くまとまり、破られない。乱れは治まりから生まれ、臆病は勇敢から生まれ、弱さは強さから生まれる。治と乱を分けるのは編成であり、勇と怯を分けるのは勢いであり、強と弱を分けるのは態勢である。
解説
外から見た混乱と、内側の秩序は別物だという指摘から始まる。むしろ整然としているように見せることが、時に敵を誘う手にもなる。後半の「乱は治に生じ、怯は勇に生じ、弱は強に生ず」は、あらゆる崩れが良い状態から始まるという逆説である。うまく回っているときにこそ、次の乱れの種が蒔かれる。そして孫子は、それを気質の問題にせず、編成・勢い・態勢という操作可能な条件に還元した。人を責めても直らないが、条件は変えられる。