修証義 / 第四章 発願利生
大凡菩提心の行願には、是の如くの道理靜かに思惟すべし。卒爾にすること勿れ。濟度攝受に一切衆生皆化を被ふらん功德を禮拜恭敬すべし。
新字:大凡菩提心の行願には、是の如くの道理静かに思惟すべし。卒爾にすること勿れ。済度摂受に一切衆生皆化を被ふらん功徳を礼拝恭敬すべし。
書き下し
大凡菩提心の行願には、是の如くの道理静かに思惟すべし。卒爾にすること勿れ。済度摂受に一切衆生皆化を被ふらん功徳を礼拝恭敬すべし。
現代語訳
おおよそ、悟りを求める心による行いと願いについては、このような道理を静かに思いめぐらしなさい。軽々しくしてはならない。人々を救い導き受け入れることによって、一切の衆生がみなその教化をこうむるであろう功徳を、礼拝し、敬いなさい。
解説
四摂法を説き終えたところで、それを軽々しく扱うな、と念を押す短い節である。布施、愛語、利行、同事は、言葉にすればどれも分かりやすい。だからこそ、分かったつもりで表面だけなぞってしまいやすい。静かに思惟せよという指示は、行いの前に一度立ち止まり、その意味を深く考えることを求めている。善意の行動ほど、よく考えずにやると相手を傷つけることがある。その危うさへの戒めとしても読める。
この章句が説くこと
思惟慎重菩提心四摂法善意礼拝
関連する章句
-
『墨子』貴義子墨子曰く、今、士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。商人、一布を用うるに、敢えて茍くも繼ぎて讎らず、必ず良き者を擇ぶ。今、士の身を用うるは則ち然らず。意の欲する所は則ち之を為す。厚き者は刑罰に入り、薄き者は毁醜を被る。則ち士の身を用うるは、商人の一布を用うるの慎しみに若かざるなり。
-
『呻吟語』内篇・修身・再び一步を思へば更に好し事の心下に放ち得るに到るも、還た一たび慎むも何ぞ妨げん。言の來たりて口邊に向かふも、再び一步を思へば更に好し。
-
論語・為政篇子張禄を干(もと)むを学ぶ。子曰く、多く聞いて疑わしきを闕(か)き、其の余を慎言すれば、則ち尤(とがめ)寡なし。多く見て殆(あやう)きを闕き、其の余を慎行すれば、則ち悔寡なし。言に尤寡なく、行に悔寡なければ、禄は其の中に在り。
-
論語・述而篇子の慎む所は、斉・戦・疾なり。
-
老子・第15章古の善く士たる者は、微妙玄通、深くして識るべからず。夫れ唯だ識るべからず、故に強いて之が容を為す。豫として冬に川を渉るが若く、猶として四隣を畏るるが若く、儼としてそれ客の若く、渙として氷の将に釈けんとするが若く、敦としてそれ樸の若く、曠としてそれ谷の若く、混としてそれ濁れるが若し。孰か能く濁りて以て之を静かにして徐ろに清まさん。孰か能く安んじて以て久しく之を動かして徐ろに生ぜん。此の道を保つ者は盈つるを欲せず。夫れ唯だ盈たず、故に能く蔽れて新たに成る。
-
孫子・火攻篇故に明主は之を慎み、良将は之を警む。此れ国を安んじ軍を全うするの道なり。