修証義 / 第一章 総序
無常憑み難し。知らず露命いかなる道の草にか落ちん。身已に私に非ず。命は光陰に移されて暫くも停め難し。紅顏いづくへか去りにし。尋ねんとするに蹤跡なし。熟觀する所に、往事の再び逢ふべからざる多し。無常忽ちに到るときは、國王、大臣、親暱、從僕、妻子、珍寶、たすくる無し。唯獨り黃泉に趣くのみなり。己れに隨ひ行くは、只是れ善惡業等のみなり。
新字:無常憑み難し。知らず露命いかなる道の草にか落ちん。身已に私に非ず。命は光陰に移されて暫くも停め難し。紅顔いづくへか去りにし。尋ねんとするに蹤跡なし。熟観する所に、往事の再び逢ふべからざる多し。無常忽ちに到るときは、国王、大臣、親暱、従僕、妻子、珍宝、たすくる無し。唯独り黄泉に趣くのみなり。己れに随ひ行くは、只是れ善悪業等のみなり。
書き下し
無常憑み難し。知らず露命いかなる道の草にか落ちん。身已に私に非ず。命は光陰に移されて暫くも停め難し。紅顔いづくへか去りにし。尋ねんとするに蹤跡なし。熟観する所に、往事の再び逢ふべからざる多し。無常忽ちに到るときは、国王、大臣、親暱、従僕、妻子、珍宝、たすくる無し。唯独り黄泉に趣くのみなり。己れに随ひ行くは、只是れ善悪業等のみなり。
現代語訳
無常は頼みにできない。露のような命が、どんな道端の草の上に落ちるか分からない。この身はもはや自分のものではない。命は時の流れに移されて、少しの間も留めておくことができない。若く美しかった顔はどこへ行ってしまったのか。尋ねようとしても跡形もない。よくよく見れば、過ぎた出来事で二度と出会えないものが多い。無常がふいに訪れるときには、国王も大臣も、親しい者も従者も、妻子も宝物も助けにはならない。ただ独りで黄泉へ向かうだけである。自分についてくるのは、ただ善悪の行いだけである。
解説
修証義の中でも特に読まれる節で、葬儀の場で耳にした人も多いだろう。地位も家族も財産も、死の瞬間には何一つ連れていけない。残るのは自分がしてきた行いだけだ、と言い切る。脅しのように聞こえるが、要点は最後の一句にある。持ち物ではなく行いが自分と一緒に行く、ならば日々の行いを大切にせよ、ということだ。肩書きや資産を積み上げることに追われている時期ほど、読み返す価値がある。
この章句が説くこと
無常業死執着行い孤独
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