春秋左氏伝 / 襄公十七年 子罕、築く者を撻つ
十一月。甲午。國人逐瘈狗。瘈狗入於華臣氏。國人從之。華臣懼。遂奔陳。宋皇國父為大宰。為平公築臺。妨於農功。子罕請俟農功之畢。公弗許。築者謳曰。澤門之皙。實興我役。邑中之黔。實慰我心。子罕聞之。親執扑。以行築者。而抶其不勉者。曰吾儕小人。皆有闔廬。以辟燥濕寒暑。今君為一臺而不速成。何以為役。謳者乃止。或問其故。子罕曰。宋國區區。而有詛有祝。禍之本也。齊晏桓子卒。晏嬰麤縗斬。苴絰帶。杖。菅屨。食鬻。居倚廬。寢苫。枕草。其老曰。非大夫之禮也。曰。唯卿為大夫。
新字:十一月。甲午。国人逐瘈狗。瘈狗入於華臣氏。国人従之。華臣懼。遂奔陳。宋皇国父為大宰。為平公築台。妨於農功。子罕請俟農功之畢。公弗許。築者謳曰。沢門之皙。実興我役。邑中之黔。実慰我心。子罕聞之。親執扑。以行築者。而抶其不勉者。曰吾儕小人。皆有闔廬。以辟燥湿寒暑。今君為一台而不速成。何以為役。謳者乃止。或問其故。子罕曰。宋国区区。而有詛有祝。禍之本也。斉晏桓子卒。晏嬰麤縗斬。苴絰帯。杖。菅屨。食鬻。居倚廬。寝苫。枕草。其老曰。非大夫之礼也。曰。唯卿為大夫。
書き下し
十一月甲午、國人瘈狗を逐ふ。瘈狗華臣氏に入る。國人之に從ふ。華臣懼れ、遂に陳に奔る。宋の皇國父大宰と為り、平公の為に臺を築き、農功を妨ぐ。子罕農功の畢はるを俟たんことを請ふ。公許さず。築く者謳ひて曰く、「澤門の皙、實に我が役を興す。邑中の黔、實に我が心を慰む」と。子罕之を聞き、親ら扑を執りて、以って築く者を行り、其の勉めざる者を抶ちて曰く、「吾が儕小人、皆闔廬有りて、以って燥濕寒暑を辟く。今君一臺を為りて速やかに成らず、何を以ってか役を為さん」と。謳ふ者乃ち止む。或ひと其の故を問ふ。子罕曰く、「宋國區區たるに、詛ふ有り祝ふ有るは、禍の本なり」と。齊の晏桓子卒す。晏嬰麤縗斬、苴絰帶、杖、菅屨、鬻を食ひ、倚廬に居り、苫に寢ね、草を枕とす。其の老曰く、「大夫の禮に非ざるなり」と。曰く、「唯だ卿のみ大夫為り」と。
現代語訳
十一月甲午の日、国の人々が狂犬を追っていた。狂犬が華臣の屋敷に逃げ込み、人々もそれを追って屋敷に入った。華臣は(自分を討ちに来たと思って)恐れ、そのまま陳に亡命した。宋の皇国父(こうこくほ)が大宰となり、平公のために高台を築いたが、それが農作業の妨げとなった。子罕(しかん)は農作業が終わるまで待つよう願い出たが、平公は許さなかった。工事の人夫たちは歌った。「沢門の色白の男(皇国父)が、われらに労役を課した。町なかの色黒の男(子罕)が、われらの心を慰めてくれる」。子罕はこれを聞くと、自ら鞭を手にして工事の人夫たちを見回り、怠けている者を打って言った。「われら身分の低い者でも、みな家を持って、乾燥や湿気、寒さ暑さを避けている。いま君はたった一つの台を造らせているのに、それが速やかにできないのでは、どうして労役を務めたと言えようか」。歌っていた者たちはそこで歌うのをやめた。ある人がそのわけを尋ねると、子罕は言った。「宋のような小さな国で、一方を呪い、一方をたたえる声があるのは、禍のもとである」。斉の晏桓子(あんかんし、晏弱)が亡くなった。子の晏嬰(あんえい、晏子)は、粗い麻の縁を縫わない喪服を着、麻の首帯と腰帯をつけ、杖をつき、菅の草履をはき、粥をすすり、倚廬(喪のための仮小屋)に住み、むしろの上に寝て、草を枕とした。家老が言った。「それは大夫の礼ではありません(士の礼です)」。晏嬰は言った。「卿だけが大夫なのだ(私は卿ではないから、この礼でよい)」。
解説
この章句が説くこと
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