尚書 / 蔡仲之命
爾其戒哉!慎厥初,惟厥終,終以不困,不惟厥終,終以困窮;懋乃攸績,睦乃四鄰,以蕃王室,以和兄弟。
書き下し
爾其れ戒めよや。厥の初めを慎み、惟れ厥の終はりを惟へ。終はり以て困しまず。厥の終はりを惟はずんば、終はり以て困窮せん。乃の績とする攸を懋め、乃の四鄰に睦み、以て王室に蕃となり、以て兄弟を和せよ。
現代語訳
汝は戒めよ。その始めを慎み、その終わりまで思いをいたせ。そうすれば最後に困ることはない。その終わりを思わなければ、最後には困窮するであろう。汝の果たすべき功績に努め、四方の隣国と睦まじくし、それによって王室の垣根となり、兄弟の国々を和合させよ。
解説
蔡仲への命の中ほどで、王は「厥の初めを慎み、惟れ厥の終はりを惟へ」と戒める。事を始めるときに慎むだけでなく、その結末まで見通して考えれば最後に困ることはなく、終わりを考えなければ困窮に陥るという、きわめて実際的な教えである。さらに自分の務めに励み、隣国と仲よくし、王室の藩屛となって兄弟の国を和合させよと、諸侯としての役割を具体的に示している。父が乱に加わって処罰された蔡仲にとって、この言葉は身の処し方そのものであった。新しい任務に就くとき、出だしの意気込みだけでなく、終わりの姿を思い描いて臨めているか。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。
関連する章句
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尚書・蔡仲之命乃の視聴を詳らかにし、側言を以て厥の度を改むる罔ければ、則ち予一人汝を嘉せん。」王曰く、「嗚呼(ああ)!小子胡よ、汝往けや。朕の命を荒棄すること無かれ。」
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尚書・仲虺之誥嗚呼(ああ)、厥(そ)の終はりを慎むは、惟れ其の始めにあり。礼有るを殖(ふ)やし、昬暴(こんばう)を覆(くつがへ)す。天道を欽崇(きんすう)し、永く天命を保て」と。
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尚書・蔡仲之命惟れ周公冢宰に位し、百工を正す。群叔流言す。乃ち管叔を商に致辟し、蔡叔を郭鄰に囚ふるに、車七乗を以てす。霍叔を庶人に降し、三年歯(よはひ)せず。蔡仲克く庸(つね)に徳を祗み、周公以て卿士と為す。叔卒し、乃ち諸(これ)を王に命じて之を蔡に邦せしむ。王若(かく)のごとく曰く、「小子胡よ。惟れ爾徳に率ひて行を改め、克く厥の猷を慎む。肆に予爾に命じて東土に侯たらしむ。往きて乃の封に即け、敬せよや。爾尚はくは前人の愆を蓋ひ、惟れ忠惟れ孝なれ。爾乃ち跡を自身に邁め、克く勤めて怠ること無く、以て憲を乃の後に垂れよ。乃の祖文王の彝訓に率ひ、爾の考の王命に違ふが若くなる無かれ。
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尚書・蔡仲之命小民を康濟するに、率ね中よりし、聰明を作して舊章を亂すこと無かれ。
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尚書・太甲下民事を軽んじて惟れ難しとする無かれ。厥の位に安んじて惟れ危ふしとする無かれ。終はりを始めに慎め。
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尚書・蔡仲之命善を為すこと同じからざれども、同じく治に歸す。惡を為すこと同じからざれども、同じく亂に歸す。
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