尚書 / 太甲下
無輕民事惟難,無安厥位惟危,慎終于始。
新字:無軽民事惟難,無安厥位惟危,慎終于始。
書き下し
民事を軽んじて惟れ難しとする無かれ。厥の位に安んじて惟れ危ふしとする無かれ。終はりを始めに慎め。
現代語訳
民の仕事を軽んじてはならない。その難しさを思え。自分の地位に安住してはならない。その危うさを思え。終わりを慎むことは、始めから慎むことにある。
解説
伊尹が太甲に与えた戒めの一節で、三つの短い句からなる。「民事を軽んずること無かれ、惟れ難し」は、民の暮らしや仕事を軽く見ず、その苦労を思えという意味である。「厥の位に安んずること無かれ、惟れ危し」は、地位に安住せず、常にその危うさを自覚せよという意味で、「安きに居て危きを思ふ」という考えに通じる。「終はりを始めに慎む」は、よい終わりを迎えるには始めから慎めという教えで、仲虺之誥にも同じ趣旨の言葉がある。現場の苦労を軽んじず、今の地位を当然と思わず、物事の始めから終わりを見通して慎む。上に立つ者が陥りやすい三つの落とし穴を、簡潔に言い当てた言葉である。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。
関連する章句
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尚書・太甲下一人元(おほ)いに良ければ、万邦以て貞(ただ)し。君は弁言を以て旧政を乱すこと罔(な)かれ。臣は寵利を以て成功に居ること罔かれ。邦其れ永く休(よ)きに孚(まこと)あらん」と。
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尚書・仲虺之誥嗚呼(ああ)、厥(そ)の終はりを慎むは、惟れ其の始めにあり。礼有るを殖(ふ)やし、昬暴(こんばう)を覆(くつがへ)す。天道を欽崇(きんすう)し、永く天命を保て」と。
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尚書・蔡仲之命爾其れ戒めよや。厥の初めを慎み、惟れ厥の終はりを惟へ。終はり以て困しまず。厥の終はりを惟はずんば、終はり以て困窮せん。乃の績とする攸を懋め、乃の四鄰に睦み、以て王室に蕃となり、以て兄弟を和せよ。
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尚書・太甲下伊尹申(かさ)ねて王に誥(つ)げて曰く、「嗚呼(ああ)、
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尚書・太甲中朕王の休を承けて斁(いと)ふ無からん」と。
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尚書・周官寵に居りて危うきを思い、畏れざる罔く、畏れざれば畏るるに入る。
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