尚書 / 伊訓
以至于有萬邦,茲惟艱哉!敷求哲人,俾輔于爾後嗣。制官刑,儆于有位。曰:『敢有恒舞于宮、酣歌于室,時謂巫風;敢有殉于貨色、恒于游畋,時謂淫風;敢有侮聖言、逆忠直、遠耆德、比頑童,時謂亂風。』
新字:以至于有万邦,茲惟艱哉!敷求哲人,俾輔于爾後嗣。制官刑,儆于有位。曰:『敢有恒舞于宮、酣歌于室,時謂巫風;敢有殉于貨色、恒于游畋,時謂淫風;敢有侮聖言、逆忠直、遠耆徳、比頑童,時謂乱風。』
書き下し
以て万邦を有(たも)つに至る、茲(こ)れ惟れ艱(かた)いかな。敷(あまね)く哲人を求めて、爾(なんぢ)の後嗣を輔けしむ。官刑を制して、有位を儆(いまし)む。曰く、『敢へて恒に宮に舞ひ、室に酣歌(かんか)する有らば、時(こ)れを巫風と謂ふ。敢へて貨色に殉(したが)ひ、游畋(いうでん)に恒にする有らば、時れを淫風と謂ふ。敢へて聖言を侮り、忠直に逆らひ、耆徳(きとく)を遠ざけ、頑童に比(した)しむ有らば、時れを乱風と謂ふ』と。
現代語訳
(先王が)あらゆる国を保つに至ったのは、まことに困難なことであった。先王は広く賢明な人を求めて、そなたたち子孫を補佐させた。また官吏への刑罰を定めて、位にある者を戒めた。その定めに言う。『もし宮中でいつも舞い、部屋で酒に酔って歌う者があれば、これを巫風(ふふう、神がかりの風俗)という。もし財貨と女色におぼれ、いつも遊びや狩りにふける者があれば、これを淫風という。もし聖人の言葉を侮り、忠実で正直な者に逆らい、年長で徳のある者を遠ざけ、愚かな若者と親しむ者があれば、これを乱風という。』
解説
伊尹が、湯の定めた官吏の戒めを語る部分である。湯は国を保つことの難しさを知っていたので、広く賢人を求めて子孫を補佐させ、位にある者を戒める刑罰を定めた。その中で、上に立つ者を堕落させる風潮を三つに分けている。宴と歌舞におぼれる「巫風」、財貨・女色・遊興にふける「淫風」、そして聖人の言葉を侮り、忠臣に逆らい、徳ある年長者を遠ざけて愚かな若者と親しむ「乱風」である。とくに乱風は、耳に心地よい者ばかりを近づけ、諫める者を遠ざけるという、組織が衰える典型的な兆候を言い当てている。上に立つ者が誰を近くに置くかは、そのまま組織の風土を決める。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。
関連する章句
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尚書・伊訓惟(こ)れ茲(こ)の三風十愆(さんぷうじゅうけん)、卿士(けいし)一つも身に有れば、家必ず喪(うしな)われ、邦君(ほうくん)一つも身に有れば、国必ず亡ぶ。
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尚書・伊訓臣下匡(ただ)さずんば、其の刑は墨、具(つぶさ)に蒙士に訓(をし)ふ。嗚呼(ああ)、嗣王厥(そ)の身を祗(つつし)み、念へや。聖謨洋洋として、嘉言孔(はなは)だ彰(あき)らかなり。惟れ上帝は常ならず、
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尚書・伊訓爾惟れ徳は小なりとする罔かれ、万邦惟れ慶ばん。爾惟れ不徳は大なりとする罔くとも、厥の宗を墜さん」と。
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尚書・伊訓上に居りては克(よ)く明らかに、下と為りては克く忠なれ。人に与(くみ)するに備わるを求めず、身を検するに及ばざるが若(ごと)くせよ。
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