師導古典を学びたいすべての人に

尚書 / 大禹謨

可愛非君?可畏非民?眾非元后,何戴?后非眾,罔與守邦?欽哉!慎乃有位,敬修其可願,四海困窮,天祿永終。惟口出好興戎,朕言不再。」禹曰:「枚卜功臣,惟吉之從。」帝曰:「禹!官占惟先蔽志,昆命于元龜。朕志先定,詢謀僉同,鬼神其依,龜筮協從,卜不習吉。」禹拜稽首,固辭。帝曰:「毋!惟汝諧。」正月朔旦,受命于神宗,率百官若帝之初。帝曰:「咨,禹!惟時有苗弗率,汝徂征。」禹乃會群后,誓于師曰:「濟濟有眾,咸聽朕命。蠢茲有苗,昏迷不恭,侮慢自賢,反道敗德,君子在野,小人在位,民棄不保,天降之咎,肆予以爾眾士,奉辭伐罪。爾尚一乃心力,其克有勳。」三旬,苗民逆命。益贊于禹曰:

新字:可愛非君?可畏非民?衆非元后,何戴?后非衆,罔与守邦?欽哉!慎乃有位,敬修其可願,四海困窮,天禄永終。惟口出好興戎,朕言不再。」禹曰:「枚卜功臣,惟吉之従。」帝曰:「禹!官占惟先蔽志,昆命于元亀。朕志先定,詢謀僉同,鬼神其依,亀筮協従,卜不習吉。」禹拝稽首,固辞。帝曰:「毋!惟汝諧。」正月朔旦,受命于神宗,率百官若帝之初。帝曰:「咨,禹!惟時有苗弗率,汝徂征。」禹乃会群后,誓于師曰:「済済有衆,咸聴朕命。蠢茲有苗,昏迷不恭,侮慢自賢,反道敗徳,君子在野,小人在位,民棄不保,天降之咎,肆予以爾衆士,奉辞伐罪。爾尚一乃心力,其克有勲。」三旬,苗民逆命。益賛于禹曰:

書き下し

愛すべきは君に非ずや。畏るべきは民に非ずや。衆元后に非ずんば何をか戴かん。后衆に非ずんば与(とも)に邦を守る罔(な)し。欽(つつし)まんかな。乃(なんぢ)の有位を慎み、敬みて其の願ふべきを修めよ。四海困窮せば、天禄永く終へん。惟れ口は好を出だし戎(じゆう)を興す。朕が言再びせず」と。禹曰く、「功臣を枚卜(ばいぼく)し、惟れ吉に之れ従はん」と。帝曰く、「禹よ、官占は惟れ先づ志を蔽(さだ)め、昆(のち)に元亀に命ず。朕が志先づ定まり、詢謀(じゆんぼう)僉(みな)同じく、鬼神其れ依り、亀筮(きぜい)協(かな)ひ従ふ。卜は吉を習(かさ)ねず」と。禹拝して稽首し、固く辞す。帝曰く、「毋(な)かれ。惟れ汝諧(かな)へり」と。正月朔旦、命を神宗に受け、百官を率ゐること帝の初めの若(ごと)くす。帝曰く、「咨(ああ)、禹。惟れ時(これ)有苗率(したが)はず、汝徂(ゆ)きて征せよ」と。禹乃ち群后を会し、師に誓ひて曰く、「済済たる有衆、咸(みな)朕が命を聴け。蠢(うごめ)く茲(こ)の有苗、昏迷して恭しからず、侮慢にして自ら賢とし、道に反し徳を敗り、君子野に在り、小人位に在り。民棄てて保たず、天之に咎を降す。肆(ゆゑ)に予爾(なんぢ)衆士を以て、辞を奉じて罪を伐つ。爾尚(こひねが)はくは乃の心力を一にせよ。其れ克く勲有らん」と。三旬、苗民命に逆らふ。益禹を賛(たす)けて曰く、

現代語訳

慕うべきものは君主ではないか。畏れるべきものは民ではないか。民衆は君主がいなければ誰を戴けばよいのか。君主は民衆がいなければ共に国を守る者がいない。つつしめ。そなたの地位を慎み、民が願うべきことをうやうやしく行え。天下の民が困窮すれば、天が授けた位も永久に終わってしまう。口は善いことも生み出すが、争いも引き起こす。私はこのことを二度とは言わない。」禹は言った。「功臣たちを一人ずつ占って、吉と出た者に従いたい。」帝は言った。「禹よ。占いの官が占うときは、まず人の意志を定め、その後で大亀に問うものだ。私の意志はすでに定まり、相談した者もみな同じ意見で、鬼神も従い、亀甲と筮竹の占いもかなっている。占いは吉を重ねて問わないものだ。」禹は拝礼して額を地につけ、固く辞退した。帝は言った。「辞退してはならない。ただそなたがふさわしいのだ。」正月の元日の朝、禹は神宗(堯の廟)で命を受け、百官を率いることは帝舜が即位した当初と同じようにした。帝は言った。「ああ、禹よ。今、有苗(ゆうびょう、南方の部族)が従わない。そなたが出向いて討て。」禹はそこで諸侯を集め、軍に誓って言った。「整然と並ぶ者たちよ、みなわが命令を聞け。愚かにうごめくこの有苗は、道理に暗く恭しさがなく、人を侮って自らを賢いとし、道に背き徳を損なっている。君子は野にあり、小人が位にある。民は彼らを見捨てて守らず、天は彼らに災いを下した。だから私はそなたたち兵士を率い、帝の言葉を奉じて罪を討つ。そなたたちはどうか心と力を一つにせよ。そうすれば功を立てられるだろう。」三十日たっても、苗の民は命に逆らった。益(えき)は禹を補佐して言った。

解説

帝舜が禹に位を譲る際の最後の戒めと、禹が有苗を討つ場面である。「愛すべきは君に非ずや、畏るべきは民に非ずや」に始まる一節は、君主と民が互いを必要とする関係を説き、民の困窮が天命の終わりを招くと警告する。民を畏れよという民本思想の代表的な言葉である。「口は好を出だし戎を興す」は、言葉が善をも争いをも生むという戒めとして今も引かれる。禹が占いで功臣から後継を選びたいと言うと、舜は人の意志が先に定まり、衆議も神意も一致していると退ける。組織の長は、守るべき人々を畏れる気持ちを持ち、言葉の重みを自覚していなければならない。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る