尚書 / 大禹謨
好生之德,洽于民心,茲用不犯于有司。」帝曰:「俾予從欲以治,四方風動,惟乃之休。」帝曰:「來,禹!降水儆予,成允成功,惟汝賢。
新字:好生之徳,洽于民心,茲用不犯于有司。」帝曰:「俾予従欲以治,四方風動,惟乃之休。」帝曰:「来,禹!降水儆予,成允成功,惟汝賢。
書き下し
生を好むの徳、民心に洽(あまね)し。茲(ここ)を用(も)て有司を犯さず」と。帝曰く、「予をして欲するに従ひて以て治めしめ、四方風のごとく動く、惟れ乃(なんぢ)の休(よ)きなり」と。帝曰く、「来たれ、禹。降水予を儆(いまし)む。允(まこと)を成し功を成す、惟れ汝の賢なり。
現代語訳
生かすことを好む帝の徳は、民の心に行きわたっている。そのため民は役人の定めを犯さない。」帝は言った。「私が望むとおりに治めることができ、四方の民が風になびくように従うのは、ただそなたのおかげである。」帝は言った。「来たれ、禹よ。あの洪水は天が私を戒めたものであった。そなたは誠実に務め、治水の功を成し遂げた。それはただそなたの賢さによる。
解説
皐陶が帝の徳を「生を好むの徳」とまとめ、帝舜が皐陶の功をたたえ、さらに禹の治水の功を称える場面である。「好生の徳」は、刑罰の場にあっても人を生かすことを願う君主の心を指し、のちに死刑を慎む慈悲の心を表す言葉として広く用いられた。民がその徳に感じて自ら法を犯さなくなるという考え方は、刑罰で脅すより徳で導く方が治まるという儒家の徳治思想そのものである。上に立つ者が部下の働きを具体的な言葉で認め、困難を自分への戒めとして受け止める姿勢は、今の組織でもそのまま通じる。罰の厳しさより、人を生かそうとする心が伝わるときに、人は自ら規律を守るようになる。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。
関連する章句
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尚書・大禹謨民中に協(かな)ふ、時(こ)れ乃(なんぢ)の功なり。懋(つと)めんかな」と。皐陶曰く、「帝の徳愆(あやま)つ罔(な)し。下に臨むに簡を以てし、衆を御するに寛を以てす。罰は嗣(し)に及ばず、賞は世に延(ひ)く。過(あやま)ちを宥(ゆる)すに大無く、故(ことさら)を刑するに小無し。
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尚書・大禹謨水・火・金・木・土・穀、惟れ修まり、正徳・利用・厚生、惟れ和す。九功惟れ敘(つい)で、九敘惟れ歌ふ。之を戒むるに休(よろこび)を用ひ、之を董(ただ)すに威を用ひ、之を勧むるに九歌を以てし、壊(やぶ)ること勿(な)からしめよ」と。帝曰く、「俞(しか)り。地平らかに天成り、六府三事允(まこと)に治まり、万世永く頼る、時(こ)れ乃(なんぢ)の功なり」と。帝曰く、「格(きた)れ、汝禹。朕帝位に宅(を)ること三十有三載、耄期(ばうき)にして勤むるに倦む。汝惟れ怠らず、朕が師を総(す)べよ」と。禹曰く、「朕が徳克(よ)くせず、民依らず。皐陶は邁(つと)めて徳を種(し)き、徳乃ち降り、黎民之に懐(なつ)く。帝念へや。茲(これ)を念ふも茲に在り、茲を釈(す)つるも茲に在り、名言するも茲に在り、允に出だすも茲に在り。惟れ帝功を念へ」と。帝曰く、「皐陶よ、惟れ茲の臣庶、予が正を干(をか)すこと或る罔(な)し。汝士と作りて、五刑に明らかにし、以て五教を弼(たす)け、予が治に期す。
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尚書・大禹謨疑謀は成すこと勿(な)ければ、百志惟れ熙(ひろ)まらん。道に違ひて以て百姓の誉れを干(もと)むる罔(な)く、百姓に咈(もと)りて以て己の欲に従ふ罔かれ。怠ること無く荒むこと無ければ、四夷来たり王とせん」と。禹曰く、「於(ああ)、帝念へや。
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尚書・大禹謨告ぐる無きを虐げず、困窮を廃せざるは、惟れ帝のみ時(これ)克(よ)くす」と。益曰く、「都(ああ)、帝の徳は広く運(めぐ)り、乃ち聖に乃ち神に、乃ち武に乃ち文なり。皇天眷命(けんめい)し、奄(あまね)く四海を有(たも)ちて天下の君と為る」と。禹曰く、「迪(みち)に恵(したが)へば吉、逆に従へば凶、惟れ影響のごとし」と。益曰く、「吁(ああ)、戒めんかな。
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尚書・大禹謨曰若(ここ)に古を稽(かんが)ふるに、大禹を文命と曰ふ。四海に敷(し)き、祗(つつし)みて帝に承(う)く。曰く、
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尚書・大禹謨帝初め歴山に于(お)いて、往きて田し、日に旻天(びんてん)に号泣し、父母に于いて、罪を負ひ慝(とく)を引く。祗(つつし)みて載(こと)として瞽瞍(こそう)に見(まみ)え、夔夔(きき)として斎慄(さいりつ)すれば、瞽も亦允(まこと)に若(したが)へり。至諴(しかん)は神を感ぜしむ。矧(いは)んや茲の有苗をや」と。禹昌言を拝して曰く、「俞(しか)り」と。師を班(かへ)し旅を振(をさ)む。帝乃ち誕(おほ)いに文徳を敷き、干羽を両階に舞はしむ。七旬にして有苗格(いた)る。
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