尚書 / 大禹謨
曰若稽古,大禹曰文命。敷於四海,祗承于帝。曰:
書き下し
曰若(ここ)に古を稽(かんが)ふるに、大禹を文命と曰ふ。四海に敷(し)き、祗(つつし)みて帝に承(う)く。曰く、
現代語訳
古の大禹について考えてみると、その名は文命といった。その文徳と教えを四方の海の果てまで広め、つつしんで帝舜の命を受けた。(禹は)言った。
解説
大禹謨の書き出しで、禹の人となりを紹介する一節である。「謨」とは君臣が政治について語り合った謀りごとの記録を指し、大禹謨は禹・益・皐陶と帝舜の対話からなる。禹は治水の英雄として知られるが、ここでは力や技術よりも、文徳を四海に広め、主君の命をつつしんで受ける人物として描かれている。堯典・舜典と同じ「曰若稽古」で書き起こすことで、禹を堯・舜に並ぶ聖王として位置づけている。功績をあげた者がそれを誇らず、主君への敬意と謙虚さを保つことが、後継者にふさわしい資質とされたのである。大きな仕事を成し遂げた人ほど、自分の力を誇らず役割を果たす姿勢が信頼を生む。本篇は東晋期に伝わった古文尚書に属し、後世の編纂とみる説が有力である。
関連する章句
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尚書・大禹謨克(よ)く邦に勤め、克く家に倹にして、自ら満仮(まんか)せず、惟れ汝の賢なり。
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尚書・大禹謨予乃(なんぢ)の徳を懋(ほ)め、乃の丕績(ひせき)を嘉(よみ)す。天の暦数汝の躬(み)に在り、汝終(つひ)に元后に陟(のぼ)らん。
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尚書・大禹謨疑謀は成すこと勿(な)ければ、百志惟れ熙(ひろ)まらん。道に違ひて以て百姓の誉れを干(もと)むる罔(な)く、百姓に咈(もと)りて以て己の欲に従ふ罔かれ。怠ること無く荒むこと無ければ、四夷来たり王とせん」と。禹曰く、「於(ああ)、帝念へや。
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尚書・大禹謨生を好むの徳、民心に洽(あまね)し。茲(ここ)を用(も)て有司を犯さず」と。帝曰く、「予をして欲するに従ひて以て治めしめ、四方風のごとく動く、惟れ乃(なんぢ)の休(よ)きなり」と。帝曰く、「来たれ、禹。降水予を儆(いまし)む。允(まこと)を成し功を成す、惟れ汝の賢なり。
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尚書・大禹謨告ぐる無きを虐げず、困窮を廃せざるは、惟れ帝のみ時(これ)克(よ)くす」と。益曰く、「都(ああ)、帝の徳は広く運(めぐ)り、乃ち聖に乃ち神に、乃ち武に乃ち文なり。皇天眷命(けんめい)し、奄(あまね)く四海を有(たも)ちて天下の君と為る」と。禹曰く、「迪(みち)に恵(したが)へば吉、逆に従へば凶、惟れ影響のごとし」と。益曰く、「吁(ああ)、戒めんかな。
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尚書・大禹謨帝初め歴山に于(お)いて、往きて田し、日に旻天(びんてん)に号泣し、父母に于いて、罪を負ひ慝(とく)を引く。祗(つつし)みて載(こと)として瞽瞍(こそう)に見(まみ)え、夔夔(きき)として斎慄(さいりつ)すれば、瞽も亦允(まこと)に若(したが)へり。至諴(しかん)は神を感ぜしむ。矧(いは)んや茲の有苗をや」と。禹昌言を拝して曰く、「俞(しか)り」と。師を班(かへ)し旅を振(をさ)む。帝乃ち誕(おほ)いに文徳を敷き、干羽を両階に舞はしむ。七旬にして有苗格(いた)る。
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