新書 / 俗激
夫邪俗日長,民相然席於無廉醜,行義非循也。豈且爲人子背其父,爲人臣因忠於主哉?豈爲人弟欺其兄,爲人下因信其上哉?陛下雖有權柄事業,將何寄之?管子曰:「四維,一曰禮,二曰義,三曰廉,四曰耻。」「四維不張,國乃滅亡。」云使管子愚無識人也,則可;使管子而少知治體,則是豈不可爲寒心?今世以侈靡相競,而上無制度,棄禮義,損廉醜,日甚,可謂月異而歲不同矣。逐利乎不耳,慮念非顧行也。今其甚者,剄父矣,賊大母矣,踝嫗矣,刺兄矣。盜者慮探柱下之金,剟寢戶之簾,搴兩廟之器,白晝大都之中,剽吏而奪之金。矯僞者出十幾拾萬石粟,賦六百餘萬錢,乘傳而行郡諸侯,此靡無行義之尤至者已。其餘猖蹶而趨之者,乃豕羊驅而往。是類管子謂「四維不張」者也與!竊爲陛下惜之。
新字:夫邪俗日長,民相然席於無廉醜,行義非循也。豈且為人子背其父,為人臣因忠於主哉?豈為人弟欺其兄,為人下因信其上哉?陛下雖有権柄事業,将何寄之?管子曰:「四維,一曰礼,二曰義,三曰廉,四曰耻。」「四維不張,国乃滅亡。」云使管子愚無識人也,則可;使管子而少知治体,則是豈不可為寒心?今世以侈靡相競,而上無制度,棄礼義,損廉醜,日甚,可謂月異而歳不同矣。逐利乎不耳,慮念非顧行也。今其甚者,剄父矣,賊大母矣,踝嫗矣,刺兄矣。盗者慮探柱下之金,剟寝戸之簾,搴両廟之器,白昼大都之中,剽吏而奪之金。矯偽者出十幾拾万石粟,賦六百余万銭,乗伝而行郡諸侯,此靡無行義之尤至者已。其余猖蹶而趨之者,乃豕羊駆而往。是類管子謂「四維不張」者也与!窃為陛下惜之。
書き下し
夫れ邪俗 日に長じ、民 相い然りとして無廉醜に席く。行義 循うに非ざるなり。豈に且に人の子と為りて其の父に背き、人の臣と為りて因りて主に忠ならんや。豈に人の弟と為りて其の兄を欺き、人の下と為りて因りて其の上を信ぜんや。陛下 権柄・事業 有りと雖も、将に何をか之に寄せんとするや。管子 曰く、「四維とは、一に曰く礼、二に曰く義、三に曰く廉、四に曰く耻」と。「四維 張らざれば、国 乃ち滅亡す」と。云し管子をして愚にして人を識る無からしめば、則ち可なり。管子をして少しく治体を知らしめば、則ち是れ豈に寒心を為す可からざらんや。今の世 侈靡を以て相い競い、而して上に制度無く、礼義を棄て、廉醜を損すること、日に甚だしく、月に異にして歳に同じからずと謂う可し。利を逐うこと不らず、慮念は行いを顧みず。今 其の甚だしき者は、父を剄し、大母を賊い、嫗を踝し、兄を刺す。盗む者は慮るに柱下の金を探り、寝戸の簾を剟り、両廟の器を搴い、白昼の大都の中に、吏を剽して之が金を奪う。矯偽の者は十幾拾萬石の粟を出だし、六百余萬の銭を賦し、伝に乗じて郡諸侯を行く。此れ靡の行義無きの尤も至れる者のみ。其の余の猖蹶して之に趨る者は、乃ち豕羊の駆けて往くが如し。是れ管子の謂う「四維 張らず」の類なるか。窃かに陛下の為に惜しむ。
現代語訳
よこしまな風俗は日ごとに増し、民は互いにそれを当然として恥なき状態に安んじています。行いも義に従っていません。それで、人の子として父に背き、人の臣として主に忠実でいられるでしょうか。人の弟として兄を欺き、下の者として上を信じられるでしょうか。陛下に権力や事業があっても、いったい何を誰に託されるのでしょうか。管子は言いました。「四つの綱とは、一に礼、二に義、三に廉、四に恥」と。「四つの綱が張られなければ、国は滅びる」と。もし管子が愚かで人を見る目がなかったのなら、それでもよいでしょう。しかし管子が少しでも治め方の大体を知っていたなら、これは身の凍る思いをするべきことではありませんか。いまの世は贅沢で競い、上に制度がなく、礼義を捨て、廉恥を損なうことが日ごとにひどくなり、月ごと年ごとに違っていると言えるほどです。利を追うことにとどまらず、考えが行いを顧みません。ひどい者は父の首を斬り、祖母を傷つけ、老婦の踵を切り、兄を刺します。盗人は柱の下の金を探り、寝室の戸の簾を剥ぎ、二つの廟の祭器を奪い、白昼の大都の中で役人を襲って金を奪います。偽りを企てる者は十万石もの穀物を出し、六百万銭以上を徴して、伝車に乗って郡や諸侯を巡ります。これは贅沢の中でも行義のなさが極まった例です。その他の、狂ったようにそれを追う者は、豚や羊が駆けていくようです。これは管子のいう「四つの綱が張られない」たぐいでしょうか。ひそかに陛下のために惜しみます。
解説
この章句が説くこと
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『新書』俗激臣の意を以てすれば、吏は慮るに耳目に動かさず、以為えらく是れ特だ適然なるのみ、と。夫れ風を移し俗を易え、天下をして心を移して道に向かわしむること、類 俗吏の能く為す所に非ず。陛下も又 自ら憂えず、窃かに陛下の為に惜しむ。夫れ君臣を立て上下を等しくし、父子をして礼有らしめ、六親をして紀有らしむるは、此れ天の設くる所に非ず。夫れ人の設くる所なり。為さずんば特だ此れ植つれば則ち僵れ、循わざれば則ち壊る。秦 四維を滅ぼして張らず、故に君臣 乖きて相い攘い、上下 乱れ僭して差無く、父子六親 殃僇して其の宜しきを失い、奸人 幷び起こり、万民 離畔し、凡そ十三歳にして社稷 墟と為る。今にして四維 猶お未だ備わらず、故に奸人は冀幸し、而して衆下は疑惑す。豈に如かんや、今 経制を定め、主は主、臣は臣として、上下に差有り、父子六親 各おの其の宜しきを得、奸人に冀幸する所無く、群衆 上を信じて疑惑せざるに。此の業 一たび定まらば、世世 常に安く、而る後に持循する所有らん。若し夫れ経制 定まらざれば、是れ猶お江河を渡るに維楫無く、中流にして風波に遇うがごとし。船は必ず覆敗せん。悲しいかな、備え 之を豫め具えざるは。察せざる可けんや。
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『新書』時變今は何如。進取の時 去り、幷兼の勢い 過ぐ。胡ぞ孝弟循順を以て為さんや。書を善くして吏と為るのみ。胡ぞ行義節を以て為さんや。家 富みて官に出づるのみ。驕恥 偏にして祭尊と為り、黥劓の者 臂を攘いて祭政と為る。行い狗彘なりと雖も、苟くも家 富み財 足らば、机に隠れ盱視して天子と為るのみ。唯だ昆弟に罪を告げ、伯父を欺突し、父母に逆らうも、然れども銭財 多く、衣服 修まる。我 何ぞ世の基公たるを妨げん。唯だ季母・妻公の接女を愛するも、車馬 厳しく、走犬 良し。矯誙して家 美しく、盗賊して財 多し、何ぞ傷まん。交わらんと欲すれば、吾 貴寵の者を択びて之と交わり、勢いを欲すれば、吏権の者を択びて之を使う。婦を取り子を嫁がしむるに、権勢有るに非ざれば、吾 与に婚姻せず。貴戚有るに非ざれば、与に兄弟たらず。富大家に非ざれば、与に出入せず。何に因る。今 俗は侈靡にして倫を出で等を踰ゆるを以て相い驕り、富の其の事に過ぐるを以て相い競う。今世は空爵を貴び良を賤しみ、俗は靡にして奸を尊ぶ。富民は奸を為さずして貧なるは里に侮られ、廉吏は官を釈てて帰れば邑に笑わる。官に居りて敢えて奸を行いて富む者は賢吏と為り、家に処りて法を犯して利を為す者は才士と為る。
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『新書』俗激大臣の俗は、特だ牘書 報ぜず、小しく期会 答えざるを以て大故と為さず。以為えらく大故なり、大故なれば不可なり、と。天下の大指は、之を挙げて激す。俗 流れ失い、世 壊敗す。恬として怪しむを知らざるに因りて、大故なり。刀筆の吏に加え、務めは筐箱に在り、而して大体を知らず。陛下も又 自ら憂えず、故に如かざるかな。
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『管子』牧民國に四維有り。一維絕たれば則ち傾き、二維絕たれば則ち危うく、三維絕たれば則ち覆り、四維絕たれば則ち滅ぶ。傾くは正す可きなり、危うきは安んず可きなり、覆るは起こす可きなり、滅ぶるは復た錯く可からざるなり。何をか四維と謂う。一に曰く禮、二に曰く義、三に曰く廉、四に曰く恥。禮は節を踰えず、義は自ら進まず、廉は惡を蔽わず、恥は枉に從わず。故に節を踰えざれば則ち上位安く、自ら進まざれば則ち民に巧詐無く、惡を蔽わざれば則ち行い自ら全く、枉に從わざれば則ち邪事生ぜず。
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『新書』瑰瑋世 淫侈なり。知巧を飾りて以て相い詐り利する者は知士と為し、敢えて法禁を犯して大奸に昧き者は理を識ると為す。故に邪人 務めて日に形れ、奸詐 繁くして止む可からず、罪人 積みて下に衆く、時として已むこと無し。君臣 相い冒し、上下 辨無きは、此れ制度無きに生ず。今 淫侈の俗を去り、節倹の術を行い、車輿に度有らしめ、衣服器械に各おの制数有らしむ。制数 已に定まれば、故に君臣 尤を絶ち、上下 分明ならん。擅に遏うれば則ち譲め、上僭すれば則ち誅す。故に淫侈 生ずるを得ず、知巧詐謀 起こる無く、奸邪盗賊 自ら止まり、則ち民は罪を離れて遠し。知巧詐謀 起こらざる、所謂 愚なり。故に曰く、「民をして愚ならしむれば民 愈いよ県網に羅らず」と。此の四者は、君臣をして相い冒さしめ、上下をして別無からしめ、天下 困貧し、奸詐盗賊 幷び起こり、罪人 蓄積して已む無からしむる者なり。故に急速に救わざる可からず。
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『新書』時變故に兄は其の弟に勧め、父は其の子に勧む。則ち俗の邪、此に至る。商君 礼義に違い、倫理を棄て、心を進取に幷せ、之を行うこと二歳にして、秦俗 日に敗る。秦人 子有り、家 富み子 壮なれば則ち出でて分かれ、家 貧しく子 壮なれば則ち出でて贅たり。父に仮るに耰鉏・杖篲を以てすれば、耳慮に徳色有り。母 瓢椀・箕帚を取れば、慮 立ちて訊語す。其の子を抱哺するに、公と併せ踞す。婦姑 相い説ばざれば、則ち唇を反して睨む。其の子を慈しみて利を嗜み、父母を軽簡するや、慮るに倫理有るに非ず、亦た禽獣と同じからざること僅かなるのみ。然れども猶お心を幷せて時に赴く者は、曰く「功成りて義を敗るのみ」と。六国を蹷し、天下を兼ね、求めて得たり。然れども廉恥の節、仁義の厚さに反るを知らず、幷兼の法を信じ、進取の業を遂げ、凡そ十三歳にして社稷 墟と為る。守成の数を知らざるは、得失の無術なり。悲しいかな。
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