新序 / 義勇第八
陳恒弑簡公而盟,盟者皆完其家,不盟者殺之。石他人曰:「昔之事其君者,皆得其君而事之,今謂他人曰:『舍而君而事我。』他人不能,雖然,不盟則殺父母也,從而盟,是無君臣之禮也。生於亂世,不得正行;劫於暴上,不得道義。故雖盟,不以父母之死,不如退而自殺,以禮其君。」乃自殺。
新字:陳恒弑簡公而盟,盟者皆完其家,不盟者殺之。石他人曰:「昔之事其君者,皆得其君而事之,今謂他人曰:『舎而君而事我。』他人不能,雖然,不盟則殺父母也,従而盟,是無君臣之礼也。生於乱世,不得正行;劫於暴上,不得道義。故雖盟,不以父母之死,不如退而自殺,以礼其君。」乃自殺。
書き下し
陳恒簡公を弑して盟う。盟う者は皆な其の家を完うし、盟わざる者は之を殺す。石他人曰く、昔の其の君に事うる者は、皆な其の君を得て之に事う。今他人に謂いて曰く、而の君を舍きて我に事えよ、と。他人は能わず。然りと雖も、盟わずんば則ち父母を殺すなり。從いて盟わば、是れ君臣の禮無きなり。亂世に生まれて、正行を得ず。暴上に劫かされて、道義を得ず。故に盟うと雖も、父母の死を以てせず。退きて自殺し、以て其の君を禮するに如かず、と。乃ち自殺す。
現代語訳
陳恒が簡公を弑して盟約させた。盟約する者はみなその家を全うし、盟約しない者はこれを殺した。石他人は言った。「昔、その君に仕えた者は、みなその君を得て仕えた。いま私に向かって『お前の君を捨てて私に仕えよ』と言う。他人にはできない。とはいえ、盟約しなければ父母を殺すことになる。従って盟約すれば、それは君臣の礼がないことになる。乱世に生まれて、正しい行いができない。暴虐な上に脅されて、道義を通せない。だから盟約するとしても、父母の死を代償にはしない。退いて自殺し、それで君に礼を尽くすほうがよい」。そこで自殺した。
解説
義勇篇の冒頭です。誓えば旧主への礼を失い、誓わなければ家族が殺される。どちらも取れない、と自分で認めています。乱世に生まれて、正しい行いができない。暴虐な上に脅されて、道義を通せない。そのうえで、三つ目の出口を選びました。だから盟約するとしても、父母の死を代償にはしない。退いて自殺し、それで君に礼を尽くすほうがよい。家族は守り、自分だけを差し出す形です。
この章句が説くこと
陳恒簡公を弑して盟う盟わざる者は之を殺す而の君を舎きて我に事えよ乱世に生まれて正行を得ず暴上に劫かされて道義を得ず盟うと雖も父母の死を以てせず退きて自殺し以て其の君を礼するに如かず脅迫板挟み
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