新序 / 節士第七
趙武冠為成人,程嬰乃辭大夫,謂趙武曰:「昔下宫之難皆能死,我非不能死,思立趙氏後,今子既立為成人,趙宗復故,我將下報趙孟與公孫杵臼。」趙武號泣,固請曰:「武願苦筋骨以報子至死,而子忍棄我死乎?」程嬰曰:「不可,彼以我為䏻成事故,皆先我死,今我不下報之,是以我事為不成也。」遂自殺。趙武服衰三年,為祭邑,春秋祠之,世不絶。君子曰:「程嬰公孫杵臼,可謂信交厚士矣。嬰之自殺下報亦過矣。」
新字:趙武冠為成人,程嬰乃辞大夫,謂趙武曰:「昔下宫之難皆能死,我非不能死,思立趙氏後,今子既立為成人,趙宗復故,我将下報趙孟与公孫杵臼。」趙武号泣,固請曰:「武願苦筋骨以報子至死,而子忍棄我死乎?」程嬰曰:「不可,彼以我為䏻成事故,皆先我死,今我不下報之,是以我事為不成也。」遂自殺。趙武服衰三年,為祭邑,春秋祠之,世不絶。君子曰:「程嬰公孫杵臼,可謂信交厚士矣。嬰之自殺下報亦過矣。」
書き下し
趙武冠して成人と爲る。程嬰乃ち大夫を辭し、趙武に謂いて曰く、昔下宮の難、皆な能く死せり。我死する能わざるに非ず。趙氏の後を立てんことを思えばなり。今子既に立ちて成人と爲り、趙宗故に復す。我將に下りて趙孟と公孫杵臼とに報ぜんとす、と。趙武號泣し、固く請いて曰く、武願わくは筋骨を苦しめて以て子に報い死に至らん。而るに子我を棄てて死するに忍びんや、と。程嬰曰く、不可なり。彼れ我を以て能く事を成すと爲すが故に、皆な我に先んじて死せり。今我下りて之に報ぜずんば、是れ我が事を以て成らずと爲すなり、と。遂に自殺す。趙武衰を服すること三年。祭邑を爲り、春秋に之を祠り、世ミ絶えず。君子曰く、程嬰・公孫杵臼は、交わりに信あり厚き士と謂う可し。嬰の自殺して下に報ずるは亦た過ぎたり、と。
現代語訳
趙武が冠をつけて成人となった。程嬰はそこで大夫の職を辞し、趙武に言った。「昔の下宮の難で、みな死ぬことができた。私は死ねなかったのではない。趙氏の後を立てることを思っていたからだ。いまあなたは立って成人となり、趙の一族も元に復した。私は地下に行って趙孟と公孫杵臼に報せよう」。趙武は泣き叫び、強く願って言った。「武はどうか筋骨を苦しめてあなたに報い、死ぬまでそうしたい。それなのにあなたは私を捨てて死ぬに忍びるのですか」。程嬰は言った。「いけない。彼らは私が事を成し遂げられると思ったからこそ、みな私より先に死んだのだ。いま私が地下に行って報せなければ、それは私の仕事が成らなかったことにしてしまう」。そのまま自殺した。趙武は喪服を三年着た。祭祀の邑を設け、春秋に祭り、代々絶えなかった。君子は言った。「程嬰と公孫杵臼は、交わりに信があり厚い士というべきである。嬰が自殺して地下に報せたのは、やり過ぎである」。
解説
この章句が説くこと
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老子 第9章持ちて之を盈たすは、其の已るに如かず。揣(き)りてその鋭を為すは、長く保つ可からず。金玉満堂、之を能く守る者莫し。富貴して驕れば、自ら其の咎を遺す。功を成して身を退く、天の道なり。
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論語・先進篇子貢問う、「師と商とは孰れか賢れる。」子曰く、「師や過ぎたり、商や及ばず。」曰く、「然らば則ち師愈れるか。」子曰く、「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし。」
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呂氏春秋・侈樂①人は其の生を以て生きざるは莫し、而れども其の生くる所以を知らず。人は其の知を以て知らざるは莫し、而れども其の知る所以を知らず。其の知る所以を知る、之を道を知ると謂う。其の知る所以を知らざる、之を寶を棄つと謂う。寶を棄つる者は必ず其の咎に離る。世の人主は、多く珠玉戈劍を以て寶と為し、愈々多くして民愈々怨み、國人愈々危うく、身愈々危累す。則ち寶の情を失うなり。亂世の樂は此と同じ。木革の聲を為せば則ち雷の若く、金石の聲を為せば則ち霆の若く、絲竹歌舞の聲を為せば則ち譟の若し。此を以て心気を駭かし、耳目を動かし、生を搖蕩せんとすれば則ち可なるも、此を以て樂と為せば則ち樂しからず。故に樂は愈々侈にして、民は愈々鬱し、國は愈々亂れ、主は愈々卑し。則ち亦た樂の情を失うなり。
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呂氏春秋・適音③夫れ音も亦た適有り。太だ鉅なれば則ち志蕩す。蕩するを以て鉅を聽けば則ち耳容れず、容れざれば則ち橫塞す。橫塞すれば則ち振く。太だ小なれば則ち志嫌す。嫌を以て小を聽けば則ち耳充たず。充たざれば則ち詹らず。詹らざれば則ち窕す。太だ清なれば則ち志危うし。危うきを以て清を聽けば則ち耳谿極す。谿極すれば則ち鑒せず、鑒せざれば則ち竭く。太だ濁なれば則ち志下る。下れるを以て濁を聽けば則ち耳收まらず。收まらざれば則ち摶ならず。摶ならざれば則ち怒る。故に太だ鉅なると、太だ小なると、太だ清なると、太だ濁なるとは、皆適に非ざるなり。
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『新序』節士第七晉の獻公の太子の靈臺に至る。蛇左輪に繞る。御曰く、太子下りて拜せよ。吾聞く、國君の子の蛇、左輪に繞る者は速やかに國を得ん、と。太子遂に行かず、舍に返る。御人太子に見ゆ。太子曰く、吾聞く、人の子と爲る者は、盡く君に和順し、私欲を行わず、恭嚴に命を承け、君の安きに逆らわず、と。今吾國を得るは、是れ君の安きを失うなり。國の利を見て君の安きを忘るるは、子の道に非ざるなり。國を得ると聞きて其の聲に拜するは君の欲する所に非ざるなり。子の道を廢するは不孝なり。君の欲に逆らうは不忠なり。而して我をして之を行わしむるは、殆ど吾が國の危うきを欲するの明らかなるなり、と。劍を拔きて將に死せんとす。御之を止めて曰く、夫れ禨祥妖孽は天の道なり。恭嚴に命を承くるは、人の行なり。祥に拜し孽を戒むるは、禮なり。嚴恭に命を承け、身を以て君を恨まざるは、孝なり。今太子福を見て拜せざるは、禮を失う。身を殺して君を恨むは、孝を失う。僻心に從い、正行を棄つるは、臣の聞く所に非ざるなり、と。太子曰く、然らず。我國を得るは、君の孽なり。君の孽に拜するは、禮と謂う可からず。禨祥を見て君の安きを忘るるは、國の賊なり。賊心を懷きて以て君に事うるは、孝と謂う可からず。偽意を挾みて以て天下を御し、賊心を懷きて以て君に事うるは、邪の大なる者なり。而して我をして之を行わしむるは、是れ國の危うきを欲するの明らかなるなり、と。遂に劍に伏して死す。君子曰く、晉の太子は徒だ御の之をして蛇に拜せしめしのみ。祥すら猶お之を惡む。自殺に至る者は、國を欲するを疑わるるが爲なり。已の國を欲せずして以て君を安んずるは、亦た以て明らかなり。一の愚御の過言の故を爲して、身死するに至り、子の道を廢し、祭祀を絶つは、孝と謂う可からず。嫌を遠ざくと謂う可き、一節の士なり、と。