新序 / 刺奢第六
鄒穆公有令食鳬鴈必以粃無得以粟,於是倉無粃而求易於民,二石粟而得一石粃吏以為費,請以粟食之。穆公曰:「去,非汝所知也!夫百姓飽牛而耕,暴背而耘,勤而不惰者,豈為鳥獸哉?粟米,人之上食,奈何其以養鳥?且爾知小計,不知大會。周諺曰:『囊漏貯中。』而獨不聞歟?夫君者,民之父母,取倉之粟,移之於民,此非吾之粟乎?鳥苟食鄒之粃不害鄒之粟也,粟之在倉與在民,於我何擇?」鄒民聞之,皆知私積與公家為一體也,此之謂知富邦。
新字:鄒穆公有令食鳬鴈必以粃無得以粟,於是倉無粃而求易於民,二石粟而得一石粃吏以為費,請以粟食之。穆公曰:「去,非汝所知也!夫百姓飽牛而耕,暴背而耘,勤而不惰者,豈為鳥獣哉?粟米,人之上食,奈何其以養鳥?且爾知小計,不知大会。周諺曰:『囊漏貯中。』而独不聞歟?夫君者,民之父母,取倉之粟,移之於民,此非吾之粟乎?鳥苟食鄒之粃不害鄒之粟也,粟之在倉与在民,於我何択?」鄒民聞之,皆知私積与公家為一体也,此之謂知富邦。
書き下し
鄒の穆公令有り、鳧鴈を食わすに必ず粃を以てし、粟を以てするを得る無し。是に於いて倉に粃無くして民に易うるを求む。二石の粟にして一石の粃を得たり。吏以て費と爲し、粟を以て之を食わさんことを請う。穆公曰く、去れ、汝の知る所に非ざるなり。夫れ百姓は牛を飽かして耕し、背を暴して耘り、勤めて惰らざるは、豈に鳥獸の爲ならんや。粟米は、人の上食なり。奈何ぞ其れ以て鳥を養わん。且つ爾は小計を知りて、大會を知らず。周の諺に曰く、囊漏れて中に貯う、と。而るに獨り聞かざるか。夫れ君なる者は、民の父母なり。倉の粟を取りて、之を民に移す。此れ吾が粟に非ずや。鳥苟くも鄒の粃を食らわば、鄒の粟を害せざるなり。粟の倉に在ると民に在ると、我に於いて何をか擇ばん、と。鄒民之を聞き、皆な私積と公家と一體爲るを知る。此れ之を富邦を知ると謂う。
現代語訳
鄒の穆公に令があって、鴨や雁に餌をやるには必ず籾殻交じりの屑を用い、粟を用いてはならないとした。そこで倉に屑がなくなり、民と交換することを求めた。粟二石で屑一石を得た。役人はこれを損だと考え、粟で餌をやることを願い出た。穆公は言った。「去れ、そなたの知るところではない。そもそも民が牛に腹いっぱい食わせて耕し、背を日にさらして草を取り、励んで怠らないのは、鳥獣のためであろうか。粟や米は、人の上等の食べ物である。どうしてそれで鳥を養えようか。そのうえそなたは小さな勘定を知って、大きな帳尻を知らない。周のことわざに『袋から漏れても、中に貯まっている』とある。それなのに聞いたことがないのか。そもそも君というものは、民の父母である。倉の粟を取って、これを民に移す。これはわが粟ではないのか。鳥がかりに鄒の屑を食べれば、鄒の粟を損なわない。粟が倉にあるのと民にあるのと、私にとって何を選ぶことがあろうか」。鄒の民はこれを聞いて、みな自分の蓄えと公室とが一体であることを知った。これを、国を富ませることを知っていると言う。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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孔子家語・六本孔子曰わく、「舟は水に非ざれば、行かず。水舟に入れば、則ち没す。君は民に非ざれば、治まらず。民上を犯せば、則ち傾く。是の故に君子は厳ならざる可からざるなり、小人は整一ならざる可からざるなり。」
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孫子・作戦篇師に近き者は貴く売る。貴く売れば則ち百姓財竭き、財竭くれば則ち丘役に急なり。
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論語・衛霊公篇子曰く、吾の人に於けるや、誰をか毀り誰をか誉めん。如し誉むる所有らば、其れ試みる所有らん。斯の民や、三代の直道にして行いし所以なり。
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『宋名臣言行録』後集巻二・富弼王拱辰、仁宗に言いて曰く、富弼も亦た何の功か之れ有らん。但だ能く金帛の數を添えて夷狄を厚くし、而して中國を□するのみと。仁宗曰く、然らず。朕の愛する所は土宇生民のみ。財物は惜しむ所に非ざるなりと。拱辰曰く、財物は豈に生民より出でざらんやと。仁宗曰く、國家の經費は之を取ること一日の積みに非ず。歳ミ出だして以て夷狄に賜うも、亦た未だ民を困しむるに至らず。若し兵興らば調發の歳出は貲らず。今の緩やかに取るが若きに非ざるなりと。拱辰曰く、敵情厭く無く、好んで中國の隙を窺う。且つ陛下は只だ一女有るのみ。萬一和親を求めんと欲せば、則ち之を如何せんと。仁宗憫然として色を動かして曰く、苟くも社稷に利あらば、朕も亦た何ぞ一女を愛しまんやと。拱辰言塞がり、遽かに曰く、臣は陛下の己を屈して民を愛すること此くの如きを知らざりき。堯舜の主なりと。涕を洒ぎ再拜して去る。
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