新序 / 雜事第四
齊有彗星,齊侯使祝禳之。晏子曰:「無益也,祗取誣焉。天道不謟,不貳其命若之何禳之也。且天之有彗,以除穢也君無穢徳,又何禳焉?若徳之穢禳之何益?詩云:『惟此文王,小心翼翼,昭事上帝,聿懐多福,厥徳不回,以受方國。』君無違徳,方國將至,何患於彗?詩曰:『我無所監,夏后及商,用亂之故,民卒流亡。』若徳之回,亂民將流亡。祝史之為無能補也。」公説,乃止。
新字:斉有彗星,斉侯使祝禳之。晏子曰:「無益也,祗取誣焉。天道不謟,不貳其命若之何禳之也。且天之有彗,以除穢也君無穢徳,又何禳焉?若徳之穢禳之何益?詩云:『惟此文王,小心翼翼,昭事上帝,聿懐多福,厥徳不回,以受方国。』君無違徳,方国将至,何患於彗?詩曰:『我無所監,夏后及商,用乱之故,民卒流亡。』若徳之回,乱民将流亡。祝史之為無能補也。」公説,乃止。
書き下し
齊に彗星有り。齊侯祝をして之を禳わしむ。晏子曰く、益無きなり。祗だ誣を取るのみ。天道は謟らず、其の命を貳にせず。之を若何ぞ禳わんや。且つ天の彗有るは、以て穢を除くなり。君に穢德無くんば、又た何ぞ禳わん。若し德の穢れなれば、之を禳うも何の益あらん。詩に云う、惟れ此の文王、小心翼翼として、昭らかに上帝に事え、聿に多福を懷く。厥の德回らず、以て方國を受く、と。君に違德無くんば、方國將に至らんとす。何ぞ彗を患えん。詩に曰く、我監る所無し、夏后及び商、亂を用うるの故を以て、民卒に流亡す、と。若し德の回れるならば、亂民將に流亡せんとす。祝史の爲すこと補う能わざるなり、と。公說び、乃ち止む。
現代語訳
斉に彗星が現れた。斉侯は祝に祓わせようとした。晏子は言った。「益はありません。ただ偽りを招くだけです。天の道はへつらわず、その命を二枚舌にはしません。どうしてこれを祓えましょう。そのうえ天に彗星があるのは、汚れを除くためです。君に汚れた徳がなければ、また何を祓うのですか。もし徳が汚れているのなら、これを祓っても何の益がありましょう。『詩経』にいいます、『この文王は、小心翼々として、明らかに上帝に仕え、多くの福を懐に抱いた。その徳は曲がらず、それで四方の国を受けた』と。君に道に背く徳がなければ、四方の国はやって来ましょう。どうして彗星を心配されますか。『詩経』にいいます、『われらの鑑とすべきものはない、夏后と殷、乱を用いたがゆえに、民はついに流れ散った』と。もし徳が曲がっているのなら、乱れた民は流れ散るでしょう。祝や史のすることでは、補うことはできません」。公は納得して、やめた。
解説
この章句が説くこと
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葉隠・聞書第一或人(あるひと)覚悟の体(てい)覚書に、主君の身辺(しんぺん)勤むる者は別けて身持(みもち)覚悟慎むべきことなり。御側(おそば)の者の様子を見て、主人のたけを人が積(つも)るものなり。今は御機嫌悪し、序(つい)でになどと思うて居る内に、不図(ふと)御誤(おんあやまり)もあるべきことなり。又諫言(かんげん)は時を移さず申し上ぐべきことなり。仰せ出(いで)済みて後も、其の者に理を附け、少しづつもよき様に云いなせば、帰参(きさん)も早きものなり。又仕合せ(しあわせ)よき人には、無音(ぶいん)しても苦しからず、侍の義理なり。又科人(とがにん)をわろく云うは不義理の事なり。落ちぶれたる者には随分不憫(ふびん)を加え、何とぞ立ち直す様に致すべきこと、侍の義理なりと、これあり候。
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葉隠・聞書第一御縁組(ごえんぐみ)の時、何某(なにがし)一分(いちぶん)を申し達し候。この事、若き衆(しゅう)よく心得(こころえ)置くべき事なり。その身(み)気味(きみ)よく思うて、云(い)ふべき事を云うて腹切(はらき)りても本望(ほんもう)と思ふべし。よくよく了簡(りょうけん)候へ、何の益(えき)にも立たぬ事なり。我(われ)かやうの事を云うて腹切りても本望と思ふは、なるほど聞(きこ)えたり。曲者(くせもの)などと思ふは以(もっ)ての外(ほか)なる取違(とりちが)ひなり。まづ申し出でたる事その詮(せん)なく、我が身は引き取り、御養育(ごよういく)も仕(つかまつ)らず、追付(おっつ)け御死去(ごしきょ)なされ候に、御看病(ごかんびょう)も仕らず、残念千万(ざんねんせんばん)なり。気過(きす)ぎなる人は多分(たぶん)誤(あやま)る所なり。総(そう)じてその位(くらい)に至らずして諫言(かんげん)するは却(かえ)つて不忠(ふちゅう)なり。誠(まこと)の者ならば、我が存(ぞん)じ寄りたる事を似合(にあ)ひたる人に潜(ひそ)かに内談(ないだん)して、その人の思ひ寄りにさせて云へば、その事調(ととの)はるなり。これ忠節(ちゅうせつ)なり。もし、内談にてその人請(う)け合はずば、また外(ほか)の人にも内談し、とかく色々心遣(こころづか)ひをして、その事さへ調はるる様にすれば、大忠節(だいちゅうせつ)も知れぬ様にして居るものなり。幾人(いくにん)に内談しても、埒(らち)明かざる時は力に及ばず、その分(ぶん)にて打ち過ぎ、または起こし立て起こし立てすれば、多分叶(かな)ふものなり。我こそ曲者と云はるる名聞(みょうもん)ばかりにて、我が手柄(てがら)にするゆゑ調はざるなり。申し出でたる事益には立たず、人に難(なん)ぜられ、我が身を崩(くず)したる人数多(あまた)これあるなり。畢竟(ひっきょう)真(しん)の志(こころざし)なきゆゑなり。我が身を一向(いっこう)に捨て捨てて、主君の上(うえ)どうなりとも好き様にとさへ思へば、紛(まぎ)るる事はこれなく候なり。
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