新序 / 雜事第三
孫卿與臨武君議兵於趙孝成王前。王曰:「請問兵要?」臨武君對曰:「上得天時,下得地利,後之發,先之至,此用兵之要術也。」孫卿曰:「不然。臣之所聞,古之道,凡戰,用兵之術,在於一民,弓矢不調,羿不能以中六馬不和,造父不能以御遠;士民不親附,湯武不能以勝。故善用兵務在於善附民而已。」
新字:孫卿与臨武君議兵於趙孝成王前。王曰:「請問兵要?」臨武君対曰:「上得天時,下得地利,後之発,先之至,此用兵之要術也。」孫卿曰:「不然。臣之所聞,古之道,凡戦,用兵之術,在於一民,弓矢不調,羿不能以中六馬不和,造父不能以御遠;士民不親附,湯武不能以勝。故善用兵務在於善附民而已。」
書き下し
孫卿臨武君と兵を趙の孝成王の前に議す。王曰く、請う兵の要を問わん、と。臨武君對えて曰く、上は天の時を得、下は地の利を得、後れて之れ發し、先んじて之れ至る。此れ用兵の要術なり、と。孫卿曰く、然らず。臣の聞く所、古の道は、凡そ戰いて兵を用うるの術は、民を一にするに在り。弓矢調わずんば、羿も以て中つる能わず。六馬和せずんば、造父も以て遠きを御する能わず。士民親附せずんば、湯武も以て勝つ能わず。故に善く兵を用うるは、務め善く民を附かしむるに在るのみ、と。
現代語訳
荀子が臨武君と、趙の孝成王の前で兵法を論じた。王は言った。「兵の要をお尋ねしたい」。臨武君は答えた。「上は天の時を得、下は地の利を得、後から発して先に到着する。これが兵を用いる要の術です」。荀子は言った。「そうではありません。臣が聞いておりますいにしえの道では、およそ戦って兵を用いる術は、民を一つにすることにあります。弓と矢が調和していなければ、名手の羿でも的に当てることはできません。六頭の馬が和していなければ、名御者の造父でも遠くまで御することはできません。士も民も心を寄せていなければ、湯王・武王でも勝つことはできません。だから兵をよく用いるとは、努めて民を心服させることにあるだけです」。
解説
兵法の要を問われて、二人の答えがまるで違います。片方は天の時、地の利、機動。もう片方は一言でした。民を一つにすることにあります。そして例を三つ並べます。弓と矢、六頭の馬、士と民。いずれも「名人がいても、道具や仲間が揃わなければ届かない」という同じ形です。弓と矢が調和していなければ、名手の羿でも的に当てることはできません。技術論の手前に、噛み合っているかどうかがある、と。
この章句が説くこと
請う兵の要を問わん上は天の時を得下は地の利を得後れて之れ発し先んじて之れ至る凡そ戦いて兵を用うるの術は民を一にするに在り弓矢調わずんば羿も以て中つる能わず兵法一体
関連する章句
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荀子・議兵篇臨武君、孫卿子と兵を趙の孝成王の前に議す。王曰く、請う、兵の要を問わん、と。臨武君対えて曰く、上は天の時を得、下は地の利を得、敵の変動を観て、之に後れて発し、之に先んじて至る、此れ用兵の要術なり、と。
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『新序』雜事第三臨武君曰く、然らず。夫れ兵の貴ぶ所の者は勢利なり。上ぶ所の者は變詐攻奪なり。善く之を用うる者は、奄忽焉として從りて出づる所を知る莫し。孫吳之を用いて、天下に敵無し。此に由りて之を觀れば、豈に必ずしも民を附かしむるを待たんや、と。孫卿曰く、然らず。臣の言う所の者は、王者の兵、人に君たるの事なり。君の言う所の者は勢利なり。上ぶ所の者は變詐攻奪なり。仁人の兵は詐る可からざるなり。彼の詐る可き者は、怠慢なる者なり、落單なる者なり。君臣上下の間、渙然として離德有る者なり。若し桀を以て桀を詐らば、猶お幸い有らん。若し桀を以て堯を詐らば、之を譬うれば卵を以て石に投じ、指を以て沸に繞らし、羽を以て烈火を蹈むが若し。入れば則ち焦没するのみ。夫れ又た何ぞ詐る可けんや。故に仁人の兵は、鋌なれば則ち莫邪の利刃の若く、之に嬰るる者は斷たれ、鋭なれば則ち莫邪の利鋒の若く、之に當たる者は潰ゆ。圓居して方止すること、盤石の若く然り。之に觸るる者は隴種として退くのみ。夫れ又た何ぞ詐る可けんや、と。
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荀子・議兵篇孫卿子曰く、然らず。臣の聞く所の古の道は、凡そ用兵攻戦の本は、民を壹にするに在り。弓矢調わざれば、則ち羿も以て微に中つること能わず。六馬和せざれば、則ち造父も以て遠きを致すこと能わず。士民親附せざれば、則ち湯武も以て必ず勝つこと能わざるなり。故に善く民を附くる者は、是れ乃ち善く兵を用うる者なり。故に兵の要は民を善く附くるに在るのみ。
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『新序』雜事第三故に仁人の兵は、或いは將に三軍力を同じくし、上下心を一にせんとす。臣の君に於けるや、下の上に於けるや、子の父に事うるが若く、弟の兄に事うるが若く、手足の頭目を捍ぎて胸腹を覆うが若し。詐りて之を襲うは、先に驚かして後に之を撃つと一なり。夫れ又た何ぞ詐る可けんや。且つ夫れ暴亂の君は、將に誰と與に至らんとするや。彼の其の與に至る所の者は、必ず其の民なり。民の我に親しむこと、驩然として父母の如く、我を好むこと芳しきこと椒蘭の如く、反りて其の上を顧みること、灼黥の如く、仇讐の如し。人の情、桀・跖と雖も、豈に肯えて其の惡む所の爲にして、其の好む所を賊なう者有らんや。是れ猶お人の孫子をして、自ら其の父母を賊なわしむるがごとし。詩に曰く、武王旆を載せ、虔有りて鉞を秉る。火の烈烈たるが如く、則ち我を敢えて曷むる莫し、と。此の謂いなり、と。孝成王・臨武君曰く、善し、と。請う、王者の兵を問わん、と。孫卿曰く、將率は末事なり。臣請う、王者の事、人に君たるの法を列べん、と。
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荀子・議兵篇孝成王・臨武君曰く、善し。請う、王者の兵、何の道何の行を設けて可ならんかを問わん、と。孫卿子曰く、凡そ大王に在り、将率は末事なり。臣請う、遂に王者・諸侯の強弱存亡の効、安危の埶を道わん。君賢なる者は其の国治まり、君能わざる者は其の国乱る。礼を隆くし義を貴ぶ者は其の国治まり、礼を簡んじ義を賤しむ者は其の国乱る。治まる者は強く、乱るる者は弱し。是れ強弱の本なり。上仰ぐに足れば則ち下用うべきなり、上仰がざれば則ち下用うべからざるなり。下用うべければ則ち強く、下用うべからざれば則ち弱し。是れ強弱の常なり。礼を隆くし功を効すは上なり、禄を重んじ節を貴ぶは次なり、功を上とし節を賤しむは下なり。是れ強弱の凡なり。士を好む者は強く、士を好まざる者は弱し。民を愛する者は強く、民を愛せざる者は弱し。政令信なる者は強く、政令信ならざる者は弱し。民斉しき者は強く、民斉しからざる者は弱し。賞重き者は強く、賞軽き者は弱し。刑威あるは強く、刑侮らるる者は弱し。械用・兵革の攻完便利なる者は強く、械用・兵革の窳楛にして便利ならざる者は弱し。兵を用うるを重んずる者は強く、兵を用うるを軽んずる者は弱し。権一より出づる者は強く、権二より出づる者は弱し。是れ強弱の常なり。
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荀子・議兵篇臨武君曰く、然らず。兵の貴ぶ所の者は埶利なり、行う所の者は変詐なり。善く兵を用うる者は、感忽悠闇として、其の従りて出づる所を知る莫し。孫呉之を用いて天下に無敵なり、豈に必ずしも民を附くるを待たんや、と。