新序 / 雜事第二
魯君使宓子賤為單父宰,子賤辭去,因請借善書者二人,使書憲書教品;魯君予之。至單父,使書,子賤從旁引其肘,書醜則怒之,欲好書則又引之,書者患之,請辭而去。歸以告魯君,魯君曰:「子賤苦吾擾之。使不得施其善政也。」乃命有司無得擅徵發單父,單父之化大治。故孔子曰:「君子哉子賤,魯無君子者,斯安取斯?」美其徳也。
新字:魯君使宓子賤為単父宰,子賤辞去,因請借善書者二人,使書憲書教品;魯君予之。至単父,使書,子賤従旁引其肘,書醜則怒之,欲好書則又引之,書者患之,請辞而去。帰以告魯君,魯君曰:「子賤苦吾擾之。使不得施其善政也。」乃命有司無得擅徴発単父,単父之化大治。故孔子曰:「君子哉子賤,魯無君子者,斯安取斯?」美其徳也。
書き下し
魯君宓子賤をして單父の宰と爲さしむ。子賤辭去し、因りて善く書する者二人を借らんことを請い、憲書教品を書せしむ。魯君之を予う。單父に至り、書せしむ。子賤旁より其の肘を引く。書醜ければ則ち之を怒り、好く書せんと欲すれば則ち又た之を引く。書者之を患え、辭して去らんことを請う。歸りて以て魯君に告ぐ。魯君曰く、子賤は吾の之を擾すを苦しむなり。其の善政を施すを得ざらしむればなり、と。乃ち有司に命じて擅に單父を徵發するを得る無からしむ。單父の化大いに治まる。故に孔子曰く、君子なるかな子賤。魯に君子なる者無くんば、斯れ安くにか斯れを取らん、と。其の德を美とするなり。
現代語訳
魯君は宓子賤を単父の長官に任じた。子賤は暇乞いをして、そのついでに字の上手な者を二人貸してほしいと願い出て、法令や教えの書き付けを書かせることにした。魯君はこれを与えた。単父に着いて、書かせた。子賤は横からその肘を引っぱった。字がまずければ叱り、うまく書こうとすればまた引っぱった。書く者はこれに困り果て、辞去したいと願い出た。帰って魯君に告げた。魯君は言った。「子賤は、私が彼をかき乱すのを苦しんでいるのだ。よい政を施すことができなくなるからだ」。そこで役人に命じて、勝手に単父から人や物を徴発させないようにした。単父は感化されて大いに治まった。だから孔子は言った。「君子だな、子賤は。魯に君子がいなかったら、この人はどこからこれを得ただろうか」。その徳を称えたのである。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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葉隠・聞書第一或人(あるひと)覚悟の体(てい)覚書に、主君の身辺(しんぺん)勤むる者は別けて身持(みもち)覚悟慎むべきことなり。御側(おそば)の者の様子を見て、主人のたけを人が積(つも)るものなり。今は御機嫌悪し、序(つい)でになどと思うて居る内に、不図(ふと)御誤(おんあやまり)もあるべきことなり。又諫言(かんげん)は時を移さず申し上ぐべきことなり。仰せ出(いで)済みて後も、其の者に理を附け、少しづつもよき様に云いなせば、帰参(きさん)も早きものなり。又仕合せ(しあわせ)よき人には、無音(ぶいん)しても苦しからず、侍の義理なり。又科人(とがにん)をわろく云うは不義理の事なり。落ちぶれたる者には随分不憫(ふびん)を加え、何とぞ立ち直す様に致すべきこと、侍の義理なりと、これあり候。
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葉隠・聞書第一御縁組(ごえんぐみ)の時、何某(なにがし)一分(いちぶん)を申し達し候。この事、若き衆(しゅう)よく心得(こころえ)置くべき事なり。その身(み)気味(きみ)よく思うて、云(い)ふべき事を云うて腹切(はらき)りても本望(ほんもう)と思ふべし。よくよく了簡(りょうけん)候へ、何の益(えき)にも立たぬ事なり。我(われ)かやうの事を云うて腹切りても本望と思ふは、なるほど聞(きこ)えたり。曲者(くせもの)などと思ふは以(もっ)ての外(ほか)なる取違(とりちが)ひなり。まづ申し出でたる事その詮(せん)なく、我が身は引き取り、御養育(ごよういく)も仕(つかまつ)らず、追付(おっつ)け御死去(ごしきょ)なされ候に、御看病(ごかんびょう)も仕らず、残念千万(ざんねんせんばん)なり。気過(きす)ぎなる人は多分(たぶん)誤(あやま)る所なり。総(そう)じてその位(くらい)に至らずして諫言(かんげん)するは却(かえ)つて不忠(ふちゅう)なり。誠(まこと)の者ならば、我が存(ぞん)じ寄りたる事を似合(にあ)ひたる人に潜(ひそ)かに内談(ないだん)して、その人の思ひ寄りにさせて云へば、その事調(ととの)はるなり。これ忠節(ちゅうせつ)なり。もし、内談にてその人請(う)け合はずば、また外(ほか)の人にも内談し、とかく色々心遣(こころづか)ひをして、その事さへ調はるる様にすれば、大忠節(だいちゅうせつ)も知れぬ様にして居るものなり。幾人(いくにん)に内談しても、埒(らち)明かざる時は力に及ばず、その分(ぶん)にて打ち過ぎ、または起こし立て起こし立てすれば、多分叶(かな)ふものなり。我こそ曲者と云はるる名聞(みょうもん)ばかりにて、我が手柄(てがら)にするゆゑ調はざるなり。申し出でたる事益には立たず、人に難(なん)ぜられ、我が身を崩(くず)したる人数多(あまた)これあるなり。畢竟(ひっきょう)真(しん)の志(こころざし)なきゆゑなり。我が身を一向(いっこう)に捨て捨てて、主君の上(うえ)どうなりとも好き様にとさへ思へば、紛(まぎ)るる事はこれなく候なり。
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葉隠・聞書第一主人に諫言(かんげん)をするに色々あるべし。志(こころざし)の諫言は、脇(わき)に知れぬ様にするなり。御気(おんき)にさからわぬ様にして御癖(おんくせ)を直し申すものなり。細川頼之(ほそかわよりゆき)が忠義などなり。昔、御道中にて、御年寄(おとしより)何某(なにがし)承り、「某(それがし)、一命を捨てて申し上ぐべく候。段々御延引(ごえんいん)の上に脇寄(わきよ)りなど遊ばされ候節(せつ)、以ての外(ほか)然(しか)るべからず候。」と、諸人(しょにん)に向かい、「御暇乞(おいとまごい)仕り候。」と詞(ことば)を渡し、行水(ぎょうずい)、白帷子(しろかたびら)下着(したぎ)にて御前(ごぜん)へ罷出(まかりい)でられ、追付(おっつけ)退出、また諸人に向かい、「拙者(せっしゃ)申し上げ候儀、聞召(きこしめ)し分けられ本望至極(ほんもうしごく)、皆様へ一度御目に懸(かか)り候儀、不思議の仕合(しあわ)せ。」など広言(こうげん)申され候。これ皆、主人の非を顕(あらわ)し、我が忠を揚げ、威勢(いせい)を立つる仕事なり。多分、他国者(たこくもの)にこれあるなり。
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葉隠・聞書第一諫言(かんげん)の道に、我(われ)其の位(くらい)にあらずば、其の位の人に言はせて、御誤(おあやまり)直(なお)る様にするが大忠(たいちゅう)なり。此の階(かい)の為に諸人(しょにん)と懇意(こんい)する所なり。我が為にすれば追従(ついしょう)なり。一方(いっぽう)は我等(われら)荷(にな)ひ申す心入(こころいれ)からなり。成程(なるほど)なるものなり。
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荀子・大略篇人の臣下たる者は、諫むること有るも訕ること無く、亡ること有るも疾むこと無く、怨むこと有るも怒ること無し。
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尚書・皐陶謨予(われ)違(たが)わば、汝(なんじ)弼(たす)けよ。汝、面従(めんじゅう)することなく、退(しりぞ)きて後言(こうげん)あることなかれ。