新語 / 道基
川谷交錯,風化未通,九州絕隔,未有舟車之用,以濟深致遠;於是奚仲乃橈曲為輪,因直為轅,駕馬服牛,浮舟杖檝,以代人力。鑠金鏤木,分苞燒殖,以備器械,於是民知輕重,好利惡難,避勞就逸;於是皋陶乃立獄制罪,縣賞設罰,異是非,明好惡,檢奸邪,消佚亂。民知畏法,而無禮義;於是中聖乃設辟雍庠序之教,以正上下之儀,明父子之禮,君臣之義,使強不凌弱,眾不暴寡,弃貪鄙之心,興清潔之行。禮義不行,綱紀不立,後世衰廢,於是後聖乃定五經,明六藝,承天統地,窮事察微,原情立本,以緒人倫,宗諸天地,纂脩篇章,垂諸來世,被諸鳥獸,以匡衰亂,天人合策,原道悉備,智者達其心,百工窮其巧,乃調之以管弦絲竹之音,設鐘鼓歌舞之樂,以節奢侈,正風俗,通文雅。
新字:川谷交錯,風化未通,九州絶隔,未有舟車之用,以済深致遠;於是奚仲乃橈曲為輪,因直為轅,駕馬服牛,浮舟杖檝,以代人力。鑠金鏤木,分苞焼殖,以備器械,於是民知軽重,好利悪難,避労就逸;於是皋陶乃立獄制罪,県賞設罰,異是非,明好悪,検奸邪,消佚乱。民知畏法,而無礼義;於是中聖乃設辟雍庠序之教,以正上下之儀,明父子之礼,君臣之義,使強不凌弱,衆不暴寡,弃貪鄙之心,興清潔之行。礼義不行,綱紀不立,後世衰廃,於是後聖乃定五経,明六芸,承天統地,窮事察微,原情立本,以緒人倫,宗諸天地,纂脩篇章,垂諸来世,被諸鳥獣,以匡衰乱,天人合策,原道悉備,智者達其心,百工窮其巧,乃調之以管弦糸竹之音,設鐘鼓歌舞之楽,以節奢侈,正風俗,通文雅。
書き下し
川谷交錯し、風化未だ通ぜず、九州絶隔し、未だ舟車の用有らず、以て深きを済し遠きを致す。是に於て奚仲乃ち橈めて曲げて輪と為し、直きに因りて轅と為し、馬に駕し牛に服せしめ、舟を浮かべ檝を杖つき、以て人力に代う。金を鑠かし木を鏤り、苞を分ち殖を焼き、以て器械に備う。是に於て民は軽重を知り、利を好み難を悪み、労を避け逸に就く。是に於て皋陶乃ち獄を立て罪を制し、賞を県け罰を設け、是非を異にし、好悪を明らかにし、奸邪を検し、佚乱を消す。民は法を畏るるを知りて、礼義無し。是に於て中聖乃ち辟雍庠序の教えを設け、以て上下の儀を正し、父子の礼、君臣の義を明らかにし、強は弱を凌がず、衆は寡を暴せざらしめ、貪鄙の心を棄て、清潔の行いを興す。礼義行われず、綱紀立たず、後世衰廃す。是に於て後聖乃ち五経を定め、六芸を明らかにし、天を承け地を統べ、事を窮め微を察し、情を原ね本を立て、以て人倫を緒し、諸を天地に宗とし、篇章を纂修し、諸を来世に垂れ、諸を鳥獣に被らせ、以て衰乱を匡す。天人策を合し、原道悉く備わり、智者は其の心に達し、百工は其の巧を窮む。乃ち之を調うるに管弦糸竹の音を以てし、鐘鼓歌舞の楽を設け、以て奢侈を節し、風俗を正し、文雅に通ず。
現代語訳
川や谷が入り組み、教化がまだ行き渡らず、九つの州は隔てられ、深い所を渡り遠くへ行くための舟や車もありませんでした。そこで奚仲は木を曲げて車輪を作り、まっすぐな木で轅を作り、馬や牛に車を引かせ、舟を浮かべて櫂を使い、人力に代えました。金属を溶かし木に彫りを入れ、器具や道具を備えました。すると民は物の軽重を知り、利を好み困難を嫌い、労を避けて楽に就くようになりました。そこで皋陶が獄を立てて罪を定め、賞を掲げ罰を設け、是非を分け、好悪を明らかにし、悪事を取り締まり、乱れを消しました。民は法を恐れることは知りましたが、礼義は身につきませんでした。そこで中ごろの聖人が学校の教えを設け、上下の作法を正し、父子の礼と君臣の義を明らかにして、強い者が弱い者を侵さず、多い者が少ない者を虐げないようにし、貪りや卑しい心を捨てさせ、清く潔い行いを起こさせました。それでも礼義が行われず、綱紀が立たなくなり、後の世は衰えました。そこで後の聖人が五経を定め、六芸を明らかにし、天を承け地を統べ、事を窮めて微かなことを察し、実情をたずねて根本を立て、人の道を整え、天地を宗とし、篇章を編んで後世に伝え、鳥獣にまで及ぼして衰えと乱れを正しました。天と人の策が合わさって、道の根本が余さず備わり、智者はその心に達し、職人たちはその技を極めました。さらに管弦・糸竹の音を調え、鐘鼓や歌舞の楽を設けて、奢りを抑え、風俗を正し、文雅に通じさせたのです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
新語・道基是に於て先聖乃ち天文を仰ぎ観、地理を俯して察し、乾坤を図画し、以て人道を定む。民始めて開悟し、父子の親、君臣の義、夫婦の別、長幼の序有るを知る。是に於て百官立ち、王道乃ち生ず。民人は肉を食らい血を飲み、皮毛を衣る。神農に至りて、以為らく、行虫走獣は、以て民を養い難しと。乃ち食う可きの物を求め、百草の実を嘗め、酸苦の味を察し、人に五穀を食らうを教う。天下の人民、野に居り穴に処り、未だ室屋有らず、則ち禽獣と域を同じくす。是に於て黄帝乃ち木を伐り材を構え、宮室を築作し、棟を上げ宇を下し、以て風雨を避く。民は室居し穀を食らうを知りて、未だ功力を知らず。是に於て后稷乃ち封疆を列ね、畔界を画し、以て土地の宜しき所を分つ。土を辟き穀を殖え、以て民を養うに用う。桑麻を種え、糸枲を致し、以て形体を蔽う。斯の時に当たり、四瀆未だ通ぜず、洪水害を為す。禹乃ち江を決し河を疏し、之を四瀆に通じ、之を海に致す。大小相引き、高下相受け、百川順流し、各々其の所に帰る。然る後、人民高険を去りて平土に処るを得たり。
-
新語・道基後世淫邪にして、之を増すに鄭・衛の音を以てし、民は本を棄て末に趨き、技巧横出し、用意各々殊なれば、則ち雕文刻鏤を加え、膠漆丹青、玄黄琦瑋の色を傅致し、以て耳目の好みを窮め、工匠の巧みを極む。夫れ驢騾駱駝、犀象瑇瑁、琥珀珊瑚、翠羽珠玉は、山に生じ水に蔵れ、地を択びて居り、潔清明朗、潤沢にして濡い、磨すれども磷がず、涅すれども淄まず、天気の生ずる所、神霊の治むる所、幽閒清浄にして、神と浮沈し、力を効して用を為し、情を尽くして器を為さざる莫し。故に曰く、「聖人之を成す」と。能く物を統べ変に通じ、情性を治め、仁義を顕す所以なり。
-
新語・本行周室の衰微し、礼義の行われざるを閔れむに及び、厄挫頓仆しながら、諸侯に歴説し、帝王の道を匡し、天下の政を反さんと欲す。身に其の立つこと無く、世に其の主無く、天下を周流して、意に合する所無し。大道隠れて舒びず、羽翼摧けて申びず。自ら□□□深く其の化を授け、以て終始を序し、去事を追治し、以て来世を正す。紀図録を按じ、以て性命を知り、六芸を表定し、以て儒術を重んず。善悪は相い干さず、貴賤は相い侮らず、強弱は相い凌がず、賢と不肖とは相い踰ゆるを得ず、科第相い序し、万□□□を為して絶えず、功は伝わりて衰えず。詩・書・礼・楽、其の所を得たるは、乃ち天道の立つ所、大義の行わるる所なり。豈に□□□威を以てせんや。
-
文子・上禮唯だ聖人のみ盛んにして敗れざる可し。聖人の初めて楽を作るや、以て神を帰し淫を杜ぎ、其の天心に反さんとす、其の衰うるに至りては、流れて反らず、淫して色を好み、正法を顧みず、流れて後世に及び、亡国に至る。其の書を作るや、以て百事を領理し、愚者は以て忘れず、智者は以て事を記す、其の衰うるに及びては、姦偽を為して以て有罪を解き無辜を殺す。其の囿を作るや、以て宗廟の具を成し、士卒を簡びて以て不虞を戒む、其の衰うるに及びては、馳騁弋猟して以て民の時を奪い、以て民力を罷らす。其の賢を上ぶや、以て教化を平らげ、獄訟を正す、賢者位に在り、能者職に在り、沢下に施し、万民徳に懐く、其の衰うるに至りては、朋党比周し、各おの其の与する所を推し、公を廃して私に趣き、外内相挙げ、姦人位に在り、賢者隠処す。天地の道は、極まれば則ち反り、益せば則ち損す、故に聖人は弊を治めて制を改め、事終われば更め為す、其の美は和に在り、其の失は権に在り。聖人の道に曰く、礼義を修むるに非ざれば、廉恥立たず、民に廉恥無ければ、以て治む可からず、礼義を知らざれば、法も正す能わず、善を崇び醜を廃するに非ざれば、礼義に嚮わず、法無ければ以て治を為す可からず、礼義を知らざれば以て法を行う可からず、法は不孝を殺す能うも、人をして孝ならしむる能わず、盗を刑する能うも、廉ならしむる能わず、と。聖王上に在りては、好悪を明らかにして以て人に示し、非誉を経して以て之を導き、親しみて之を進め、不肖を賤しみて之を退け、刑錯きて用いず、礼義修まりて賢徳に任ずるなり。
-
新語・道基夫れ事を謀りて仁義を竝せざる者は後必ず敗れ、殖うるに本を固くせずして高基を立つる者は後必ず崩る。故に聖人は乱を防ぐに経芸を以てし、工は曲を正すに準縄を以てす。徳盛んなる者は威広く、力盛んなる者は衆に驕る。斉の桓公は徳を尚びて以て覇たり、秦の二世は刑を尚びて亡ぶ。故に虐行わるれば則ち怨積もり、徳布かるれば則ち功興り、百姓は徳を以て附き、骨肉は仁を以て親しみ、夫婦は義を以て合い、朋友は義を以て信じ、君臣は義を以て序し、百官は義を以て承け、曾・閔は仁を以て大孝を成し、伯姫は義を以て至貞を建て、国を守る者は仁を以て堅固にし、君を佐くる者は義を以て傾かず、君は仁を以て治め、臣は義を以て平らかに、郷党は仁を以て恂恂たり、朝廷は義を以て便便たり、美女は貞を以て其の行いを顕し、烈士は義を以て其の名を彰らかにし、陽気は仁を以て生じ、陰節は義を以て降り、鹿鳴は仁を以て其の群を求め、関雎は義を以て其の雄に鳴き、春秋は仁義を以て貶絶し、詩は仁義を以て存亡し、乾・坤は仁を以て和合し、八卦は義を以て相承け、書は仁を以て九族を叙し、君臣は義を以て忠を制し、礼は仁を以て節を尽くし、楽は礼を以て升降す。
-
『淮南子』本經訓天地の大なるは、矩表を以て識る可きなり。星月の行は、曆を以て推し得可きなり。雷震の聲は、鼓鐘を以て寫す可きなり。風雨の變は、音律を以て知る可きなり。是の故に大にして睹る可き者は、得て量る可きなり。明にして見る可き者は、得て蔽う可きなり。聲の聞く可き者は、得て調う可きなり。色の察す可き者は、得て別つ可きなり。夫れ至大は、天地も含む能わず。至微は、神明も領する能わず。律曆を建て、五色を別ち、清濁を異にし、甘苦を味わうに及びては、則ち樸 散じて器と為る。仁義を立て、禮樂を修むれば、則ち德 遷りて偽と為る。偽の生ずるに及ぶや、智を飾りて以て愚を驚かし、詐を設けて以て上を巧む。天下に能く之を持する者有り、能く之を治むる者有るなり。昔者 蒼頡 書を作りて、天 粟を雨らし、鬼 夜に哭す。伯益 井を作りて、龍 玄雲に登り、神 昆侖に棲む。能 愈々多くして德 愈々薄し。故に周鼎に倕を著し、其の指を銜ましめて、以て大巧の為す可からざるを明らかにす。故に至人の治や、心は神と處り、形は性と調い、靜かにして德を體し、動きて理 通ず。自然の性に隨いて已むを得ざるの化に緣り、洞然として無為にして天下自ら和し、憺然として無欲にして民自ら樸なり。𧝞祥無くして民 夭せず、忿爭せずして養い足り、海內を兼ね包み、澤 後世に及びて、之を為すは誰何なるかを知らず。是の故に生きては號無く、死しては諡無く、實 聚まらずして名 立たず。施す者は德とせず、受くる者は讓らず、德 交ごも歸す。而も之を充忍する莫きなり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る