学問のすゝめ / 十六編・心事と働きと相当すべきの論・功に食ましめて志に食ましめず
言行齟齬するとは、議論に言うところと実地に行なうところと一様ならずということなり。「功に食ましめて志に食ましめず」とは、「実地の仕事次第によりてこそ物をも与うべけれ、その心になんと思うとも形もなき人の心事をば賞すべからず」との義なり。また俗間に、「某の説はともかくも、元来働きのなき人物なり」とてこれを軽蔑することあり。いずれも議論と実業と相当せざるを咎めたるものならん。
書き下し
言行齟齬するとは、議論に言うところと実地に行なうところと一様ならずということなり。「功に食ましめて志に食ましめず」とは、「実地の仕事次第によりてこそ物をも与うべけれ、その心になんと思うとも形もなき人の心事をば賞すべからず」との義なり。また俗間に、「某の説はともかくも、元来働きのなき人物なり」とてこれを軽蔑することあり。いずれも議論と実業と相当せざるを咎めたるものならん。
現代語訳
言行が食い違うとは、議論で言うことと実地に行うことが同じでないということです。功に食わせて志に食わせずとは、実地の仕事次第でこそ物も与えるべきで、その心で何と思っていても形のない人の心事を賞してはならない、という意味です。また世間で、あの人の説はともかく、もともと働きのない人物だ、と言って軽蔑することがあります。いずれも議論と実業が釣り合わないことを咎めたものでしょう。
解説
釣り合いを欠いた状態が、二つの言い方で確かめられます。一つは古典の句で、報酬は成果に対して払え、心の中の志に払うなというもの。もう一つは世間の軽口で、説は立派だが働きがないという評です。堅い言葉と俗な言葉の両方が同じことを指しているのを示すことで、これが特別な主張ではなく常識の確認であることが分かるようになっています。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
言行成果報酬常識釣合
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