葉隠 / 聞書第十一
兵法は身を捨てゝ討つべし、向ふも身を捨てゝ討つ時、對になる。寢靜まる時と、明離るゝ時が大事なり。そこを勝つは、信心運命なり。又寢所を人に見すべからず、寢靜まる時と、明離るゝ時が大事なり。是を心に懸くべしとなり。
新字:兵法は身を捨てゝ討つべし、向ふも身を捨てゝ討つ時、対になる。寝静まる時と、明離るゝ時が大事なり。そこを勝つは、信心運命なり。又寝所を人に見すべからず、寝静まる時と、明離るゝ時が大事なり。是を心に懸くべしとなり。
書き下し
兵法は身を捨てて討つべし、向(むこ)うも身を捨てて討つ時、對(つい)になる。寢靜まる時と、明離るゝ時が大事なり。そこを勝つは、信心(しんじん)運命なり。又(また)寢所(ねどころ)を人に見すべからず、寢靜まる時と、明離るゝ時が大事なり。是(これ)を心に懸くべしとなり。
現代語訳
兵法は身を捨てて討つものであり、寝静まる時と夜が明けはなれる時が大事である。兵法は身を捨てて討つべきで、相手も身を捨てて討ってくるとき、互いに五分となる。寝静まる時と、夜が明ける時が肝心だ。その勝負どころを制するのは、信心と運命による。また、自分の寝所を人に見せてはならない。寝静まる時と、明けはなれる時が大事なのだ。これを常に心にかけておけということである。
解説
兵法における隙の生じやすい時刻を説いた条です。人が寝静まる時と夜明けの時は、心身ともに緩みが出やすく、そこが勝負の分かれ目になると指摘します。核にあるのは「身を捨てて臨めば相手と互角になる」という覚悟と、「油断の時こそ用心せよ」という危機管理です。自分の寝所を人に知られるなという一言も、備えの徹底を示しています。現代では夜襲を警戒する必要はありませんが、気の緩む時間帯・状況にこそ隙が生まれるという洞察は、仕事でも生活でも通じます。最後の詰めや慣れてきた頃の油断を戒める教訓として読めます。
この章句が説くこと
葉隠兵法油断危機管理隙身を捨てる
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