論語 / 陽貨篇
子曰:「鄙夫!可與事君也與哉?其未得之也,患得之;既得之,患失之。苟患失之,無所不至矣!」
新字:子曰:「鄙夫!可与事君也与哉?其未得之也,患得之;既得之,患失之。苟患失之,無所不至矣!」
書き下し
子曰く、鄙夫は、与に君に事う可けんや。其の未だ之を得ざるや、之を得んことを患う。既に之を得れば、之を失わんことを患う。苟くも之を失わんことを患えば、至らざる所無し。
現代語訳
先生がおっしゃった。「卑しい者と、ともに主君に仕えることができようか。まだ地位を得ていないときは、得られないことを心配する。得てしまえば、失うことを心配する。失うことを心配し始めれば、どんなことでもやりかねない。」
解説
患得患失の出典である。得る前は得られるかを心配し、得た後は失うかを心配する。心配の対象が変わるだけで、状態は変わらない。そして、失うことへの恐れが最も危険だと孔子は言う。無所不至、どんなことでもやりかねない。失うまいとする人は、隠蔽も排除も辞さなくなるからだ。組織の不祥事の多くは、この構造から生まれている。悪意ある人が起こすのではなく、失いたくない人が起こす。地位、評判、実績。守るものが大きいほど、守るための行動は過激になる。ここから引き出せる予防策は二つある。一つは、失っても大丈夫な状態を作っておくこと。もう一つは、失うことを心配し始めている人を早めに見つけることである。