荀子 / 大略篇
君臣不得不尊,父子不得不親,兄弟不得不順,夫婦不得不驩,少者以長,老者以養。故天地生之,聖人成之。
書き下し
君臣は尊ばざるを得ず、父子は親しまざるを得ず、兄弟は順ならざるを得ず、夫婦は驩ばざるを得ず、少き者は以て長じ、老いたる者は以て養はる。故に天地は之を生じ、聖人は之を成す。
現代語訳
君臣の間では敬い合わずにはいられず、父子の間では親しみ合わずにはいられず、兄弟の間では睦まじく従い合わずにはいられず、夫婦の間では喜び合わずにはいられない。若い者はそうして成長し、老いた者はそうして養われる。天地が人を生み出し、聖人がその人のあり方を完成させるのである。
解説
人と人との基本的な関わりを、君臣・父子・兄弟・夫婦の四つに整理し、それぞれにふさわしい情のかたちを挙げた一段です。敬い、親しみ、睦み、喜び合う。どれも命じられて生まれるものではなく、関係の性質そのものから自然にわき出てくるものだと荀子は言います。そしてその自然な情が働けば、若者は健やかに育ち、老人は安んじて養われる。締めくくりの一句が印象的です。天地は人を生むところまではしてくれるが、そこから先の完成は聖人の手にゆだねられている。つまり礼や教えという人為があってはじめて、人は人らしくなるという荀子らしい主張です。私たちも、家庭や職場の関係は放っておけば整うものではなく、意識して形を与え続けるものだと受け止めたいところです。