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史記 / 魯仲連鄒陽列伝

若此二士者,非不能成小廉而行小睗也,以為殺身亡軀,絕世滅後,功名不立,非智也。故去感忿之怨,立終身之名;棄忿悁之節,定累世之功。是以業與三王爭流,而名與天壤相獘也。願公擇一而行之。燕將見魯連書,泣三日,猶豫不能自決。欲歸燕,已有隙,恐誅;欲降齊,所殺虜於齊甚眾,恐已降而後見辱。喟然嘆曰:「與人刃我,寧自刃。」乃自殺。聊城亂,田單遂屠聊城。歸而言魯連,欲爵之。魯連逃隱於海上,曰:「吾與富貴而詘於人,寧貧賤而輕世肆志焉。」

新字:若此二士者,非不能成小廉而行小睗也,以為殺身亡躯,絶世滅後,功名不立,非智也。故去感忿之怨,立終身之名;棄忿悁之節,定累世之功。是以業与三王争流,而名与天壤相獘也。願公択一而行之。燕将見魯連書,泣三日,猶予不能自決。欲帰燕,已有隙,恐誅;欲降斉,所殺虜於斉甚衆,恐已降而後見辱。喟然嘆曰:「与人刃我,寧自刃。」乃自殺。聊城乱,田単遂屠聊城。帰而言魯連,欲爵之。魯連逃隠於海上,曰:「吾与富貴而詘於人,寧貧賤而軽世肆志焉。」

書き下し

此の若き二士は、小廉を成して小睗を行ふ能はざるに非ざるなり。以為へらく、身を殺し軀を亡ひ、世を絶ち後を滅ぼし、功名立たざるは、智に非ざるなりと。故に感忿の怨を去りて、終身の名を立て、忿悁の節を棄てて、累世の功を定む。是を以て業は三王と流れを争ひ、而して名は天壌と相獘る。願はくは公一を択びて之を行へ、と。燕将、魯連の書を見て、泣くこと三日、猶予して自ら決する能はず。燕に帰らんと欲すれば、已に隙有りて誅を恐る。斉に降らんと欲すれば、斉に殺虜する所甚だ衆く、已に降りて後辱めらるるを恐る。喟然として嘆じて曰く、「人と我に刃せんよりは、寧ろ自ら刃せん」と。乃ち自殺す。聊城乱れ、田単遂に聊城を屠る。帰りて魯連を言ひ、之に爵せんと欲す。魯連海上に逃れ隠れて曰く、「吾富貴にして人に詘せんよりは、寧ろ貧賤にして世を軽んじ志を肆にせん」と。

現代語訳

この二人の士は、小さな潔白を守り、小さな節義を行うことができなかったわけではない。身を殺して命を失い、家系を絶やして後継ぎを滅ぼし、功名も立てられないのは、智ではないと考えたのである。だから一時の怒りや恨みを捨てて、生涯の名声を打ち立て、憤りにこだわる節義を捨てて、代々に及ぶ功業を定めたのだ。それゆえその功業は三王(夏・殷・周の開祖)と流れを競い、その名は天地とともに尽きることがない。どうか貴公はどちらか一つを選んで実行してもらいたい」。燕の将軍は魯仲連の手紙を読んで三日間泣き、ためらって自分で決めることができなかった。燕に帰ろうとすれば、すでに朝廷との間に溝ができていて誅殺が恐ろしい。斉に降ろうとすれば、斉の人を大勢殺したり捕らえたりしてきたので、降ったあとで辱められるのが恐ろしい。深くため息をついて嘆き、「人に刃を向けられるくらいなら、いっそ自分で刃を向けよう」と言って、自害した。聊城は混乱し、田単はついに聊城の人々を皆殺しにした。田単は帰国すると魯仲連の功を王に申し上げ、爵位を与えようとした。魯仲連は海辺に逃れて隠れ、「富貴の身となって人に頭を下げるくらいなら、貧しく卑しい身のままで世を軽んじ、思うままに生きたい」と言った。

解説

聊城の書簡の結びと、その結末です。魯仲連は管仲と曹沫を「小さな節義より生涯の名を選んだ人」とまとめ、二つの道のどちらかを選べと迫ります。ところが燕の将軍は三日泣いて決められず、燕に戻れば誅殺、斉に降れば報復という板挟みのなかで自害してしまいます。説得は理屈としては完璧でしたが、相手の恐れまでは解けなかったのです。しかも将軍の死で城は乱れ、田単は聊城の住民を皆殺しにしました。魯仲連は功を賞されようとしても海辺に隠れ、富貴のために人に屈するより貧しくとも自由でいたいと言い残します。前段の邯鄲でも褒賞を辞退しており、一貫した生き方です。正しい助言でも、相手が怖くて選べない状況では届かないことがあります。助言する側は、選択肢を示すだけでなく、相手の不安をどう和らげるかまで考える必要があります。

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