師導古典を学びたいすべての人に

史記 / 張儀列伝

張儀歸,復相秦。三歲而魏復背秦為從。秦攻魏,取曲沃。明年,魏復事秦。秦欲伐齊,齊楚從親,於是張儀往相楚。楚懷王聞張儀來,虛上舍而自館之。曰:「此僻陋之國,子何以教之?」儀說楚王曰:「大王誠能聽臣,閉關絕約於齊,臣請獻商於之地六百里,使秦女得為大王箕帚之妾,秦楚娶婦嫁女,長為兄弟之國。此北弱齊而西益秦也,計無便此者。」

新字:張儀帰,復相秦。三歳而魏復背秦為従。秦攻魏,取曲沃。明年,魏復事秦。秦欲伐斉,斉楚従親,於是張儀往相楚。楚懐王聞張儀来,虚上舎而自館之。曰:「此僻陋之国,子何以教之?」儀説楚王曰:「大王誠能聴臣,閉関絶約於斉,臣請献商於之地六百里,使秦女得為大王箕帚之妾,秦楚娶婦嫁女,長為兄弟之国。此北弱斉而西益秦也,計無便此者。」

書き下し

張儀帰りて、復た秦に相たり。三歳にして魏復た秦に背きて従を為す。秦魏を攻め、曲沃を取る。明年、魏復た秦に事ふ。秦斉を伐たんと欲す、斉楚従親す、是に於いて張儀往きて楚に相たり。楚の懐王張儀の来たるを聞き、上舎を虚しくして自ら之を館す。曰く、「此れ僻陋の国なり、子何を以て之に教へん」と。儀楚王に説きて曰く、「大王誠に能く臣に聴き、関を閉ぢ約を斉に絶たば、臣請ふ商於の地六百里を献じ、秦の女をして大王の箕帚の妾たるを得しめ、秦楚婦を娶り女を嫁し、長く兄弟の国と為らん。此れ北のかた斉を弱めて西のかた秦を益すなり、計此れより便なる者無し」と。

現代語訳

張儀は秦に帰り、再び秦の宰相となった。三年後、魏は再び秦に背いて合従に加わった。秦は魏を攻めて曲沃を取った。翌年、魏は再び秦に仕えた。秦は斉を討とうとしたが、斉と楚が合従して親しくしていた。そこで張儀は楚へ行って宰相となった。楚の懐王は張儀が来ると聞き、最上の宿舎を空けて自ら彼をもてなし、言った。「ここは辺鄙で粗野な国だ。あなたはどんなことを教えてくれるのか。」張儀は楚王に説いた。「大王がまことにわたしの言うことを聞いて、斉との国境の関所を閉じて盟約を絶ってくだされば、わたしは商於の地六百里を献上し、秦の王女を大王の妻妾として差し上げ、秦と楚は互いに嫁をやり取りして、末永く兄弟の国となろう。これは北の斉を弱め、西の秦を益することであり、これほど都合のよい計略はない。」

解説

張儀の生涯で最も悪名高い「商於の地六百里」の詐術の始まりです。秦は斉を討ちたいが、斉と楚が手を結んでいて手を出せません。そこで張儀は楚に乗り込み、斉と絶交すれば商於の地六百里を献上し、秦の王女を嫁がせて兄弟国になろうと、楚の懐王に持ちかけました。懐王は最上の宿舎を空けて張儀をもてなすほど歓迎しており、魅力的な条件に心を動かされます。領土と姻戚という大きな利益を一度に示し、しかも「斉を弱め秦を益す」と、秦の利益も隠さず語ることで、かえって話に現実味を持たせる巧妙な提案です。この後、懐王はこの話に飛びつき、忠臣の警告を退けて大きな代償を払うことになります。あまりに条件のよい話にこそ慎重になるべきだという教訓の入口です。

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る