司馬法 / 用眾
危而觀其懼;靜而觀其怠;動而觀其疑;襲而觀其治。
新字:危而観其懼;静而観其怠;動而観其疑;襲而観其治。
書き下し
危うくして其の懼るるを観、静かにして其の怠るを観、動きて其の疑うを観、襲いて其の治まるを観る。
現代語訳
危機に陥れてその恐れ方を観察し、静かな状況に置いてその怠り方を観察し、動かしてその迷い方を観察し、不意打ちをしてその統率(冷静さ)ぶりを観察する。
解説
人の本性は、危機に置かれたときの怖がり方、静かなときの緩み方、動いているときの迷い方、不意を突かれたときの取り乱し方に、それぞれ違った形で表れる。平穏なときの姿だけを見て人を判断するのは早計であり、状況が変わったときにこそ本当の姿が見えてくる。誰かと信頼関係を築くときも、様々な局面での相手の様子を思い返すことが、人物を見極める手がかりになる。
この章句が説くこと
人物観察本性局面
関連する章句
-
論語・為政篇子曰く、「其の以てする所を視、其の由る所を観、其の安んずる所を察すれば、人焉んぞ廋(かく)さんや、人焉んぞ廋さんや。」
-
戦国策・齊魏爭燕斉・魏燕を争う。斉燕王に謂いて曰く、「吾趙を得たり」と。魏も亦燕王に謂いて曰く、「吾趙を得たり」と。燕以て之を決する無く、未だ適う予うる有らず。蘇子燕の相に謂いて曰く、「臣聞く、辞卑くして幣重き者は、天下を失う者なり。辞倨りて幣薄き者は、天下を得る者なり、と。今魏の辞倨りて幣薄し」と。燕因りて魏に合し、趙を得て、斉遂に北げたり。
-
二宮翁夜話・巻之一翁(おきな)曰(いわ)く、一言を聞ても人の勤惰(きんだ)は分る者なり、東京(えど)は水さへ銭が出ると云ふは、懶惰者(らんだもの)なり、水を売(う)りても銭が取れるといふは勉強人なり、夜は未(いま)だ九時なるに十時だと云ふ者は、寝たがる奴(やつ)なり、未だ九時前也と云ふは、勉強心のある奴なり、すべての事、下に目を付け、下に比較(ひこう)する者は、必(かなら)ず下り向(さがりむき)の懶惰者也、たとへば碁を打て遊ぶは酒を飲(の)むよりよろし、酒を呑むは博奕(ばくえき)よりよろしと云ふが如し、上に目を付け上に比較する者は、必ず上り向(あがりむき)なり、古語に、一言以て知とし一言以て不知(ふち)とす、とあり、うべなるかな。
-
司馬法・嚴位人に勝心有れば、惟(た)だ敵をこれ視る。人に畏心有れば、惟だ畏をこれ視る。
-
司馬法・定爵国に居りては恵むに信を以てし、軍に在りては広きに武を以てし、刃上(じんじょう)には果たすに敏を以てす。
-
司馬法・用眾凡そ戦いは、先んずれば則ち弊(つか)れ、後るれば則ち懾(おそ)れ、息(いこ)えば則ち怠り、息わざるも亦弊れ、息うこと久しきも亦其の懾に反る。