説苑 / 反質
魯人身善織屨,妻善織縞,而徙於越。或謂之曰:「子必窮!」魯人曰:「何也?」曰:「屨為履,縞為冠也,而越人徒跣剪髮,遊不用之國,欲無窮得乎?」
新字:魯人身善織屨,妻善織縞,而徙於越。或謂之曰:「子必窮!」魯人曰:「何也?」曰:「屨為履,縞為冠也,而越人徒跣剪髪,遊不用之国,欲無窮得乎?」
書き下し
魯人身自ら屨を織るに善く、妻縞を織るに善くして、越に徙る。或るひと之に謂いて曰く、「子必ず窮せん!」魯人曰く、「何ぞや?」曰く、「屨は履と為り、縞は冠と為すなり、而るに越人は徒跣にして髮を剪る、用いざるの國に遊ばんとす、窮まる無きを欲するも得んや?」と。
現代語訳
魯の国の人で、自分自身は靴を織るのが得意で、妻は白絹を織るのが得意な者がいた。この夫婦が越の国に移住しようとした。ある人がこれに言った。「あなたは必ず困窮するだろう。」魯の人は「なぜですか」と尋ねた。その人は答えた。「靴は足に履くためのものであり、白絹は冠を作るためのものだ。しかし越の人々は裸足で歩き、髪を短く切っている。そのような、靴も冠も用いない国に行こうとしているのに、困窮せずにいられると思うのか。」
解説
技術そのものがいかに優れていても、それを必要とする市場や文脈がなければ何の役にも立たないという、極めて実践的で経済学的な洞察を伝える寓話である。靴作りと機織りという確かな技能を持つ夫婦が、その技能が全く評価されない土地に移住しようとする滑稽さは、自分の強みを活かせる場所を選ぶことの重要性を鮮やかに描いている。優れたスキルや専門性を持つことと、それが通用する環境を見極めることは別問題であり、自分の能力を発揮できる場所選びこそが成否を分けるという教訓は、現代のキャリア選択や海外展開の判断にもそのまま当てはまる普遍的な知恵である。
この章句が説くこと
適所の見極め技能と市場環境選択