説苑 / 修文
知天道者冠鉥,知地道者履蹻,能治煩決亂者佩觿,能射御者佩韘,能正三軍者搢笏;衣必荷規而承矩,負繩而準下。故君子衣服中而容貌得,接其服而象其德,故望玉貌而行能,有所定矣。詩曰:「芃蘭之枝,童子佩觿。」說行能者也。
新字:知天道者冠鉥,知地道者履蹻,能治煩決乱者佩觿,能射御者佩韘,能正三軍者搢笏;衣必荷規而承矩,負縄而準下。故君子衣服中而容貌得,接其服而象其徳,故望玉貌而行能,有所定矣。詩曰:「芃蘭之枝,童子佩觿。」説行能者也。
書き下し
天道を知る者は鉥を冠り、地道を知る者は蹻を履き、能く煩を治め亂を決する者は觿を佩び、能く射御する者は韘を佩び、能く三軍を正す者は笏を搢む。衣は必ず規を荷い矩を承け、繩を負いて下に準ず。故に君子衣服中り容貌得れば、其の服に接して其の德を象る、故に玉貌を望みて行能、定まる所有り。詩に曰く、「芃蘭の枝、童子觿を佩ぶ」と。行能を說くなり。
現代語訳
天の道理を知る者は鉥(特別な冠)をかぶり、地の道理を知る者は蹻(わらじ)を履き、煩雑な問題を処理し混乱を裁くことができる者は觿(骨の解き針)を身につけ、弓を射て馬を御することができる者は韘(ゆがけ)を身につけ、三軍を統率できる者は笏を帯に挟む。衣服は必ずコンパスに則って丸みを持たせ定規に則って角を正し、垂直な糸のように下に基準を合わせる。だから君子の衣服が場にかない容貌が整っていれば、その服装に接するだけでその人の徳が象徴的に表れる。だから立派な容姿を見れば、その人の実際の行動と能力もおのずと定まって見えてくるのである。詩経に「芃蘭(草)の枝に、童子が觿を佩びている」とあるのは、行動と能力を持つ者について説いたものである。
解説

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説苑・修文衣服容貌とは、目を悅ばしむる所以なり。聲音應對とは、耳を悅ばしむる所以なり。嗜慾好惡とは、心を悅ばしむる所以なり。君子衣服中り、容貌得れば、則ち民の目悅ぶ。言語順い、應對給なれば、則ち民の耳悅ぶ。仁に就き不仁を去れば、則ち民の心悅ぶ。三者心に存し、體に暢び、動靜に形るれば、位に在らずと雖も、之を素行と謂う。故に忠心善を好みて日に之を新たにし、獨居して德を樂しみ、內悅びて形る。詩に曰く、「何ぞ其れ處るや?必ず與有ればなり。何ぞ其れ久しきや?必ず以有ればなり。」と。惟だ以有る者のみ、惟だ能く長生久視して、物に累わされること無し。
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説苑・修文傳に曰く、「情に觸れ欲を縱にする、之を禽獸と謂う。苟くも可なれば行う、之を野人と謂う。故に安んじ遷るを重んず、之を眾庶と謂う。辨然として古今の道に通ずる、之を士と謂う。賢を進め能を達す、之を大夫と謂う。上を敬い下を愛す、之を諸侯と謂う。天覆い地載す、之を天子と謂う。是の故に士は黼を服し、大夫は黻し、諸侯は火し、天子は山龍す。德彌よ盛んなる者は文彌よ縟く、中彌よ理まる者は文彌よ章らかなり。」と。詩に曰く、「之を左にし之を左にす、君子之に宜し。之を右にし之を右にす、君子之を有す。」と。傳に曰く、「君子とは、宜しからざる所無きなり。是の故に冕厲戒し、廟堂の上に立てば、有司執事敬わざる者無し。斬衰の裳、苴絰の杖、喪次に立てば、賓客弔唁哀しまざる者無し。甲を被り冑を攖て桴鼓の間に立てば、士卒勇ましからざる者莫し。故に仁は以て百姓を懷くるに足り、勇は以て危國を安んずるに足り、信は以て諸侯を結ぶに足り、強は以て患難を拒ぐに足り、威は以て三軍を率いるに足る。故に曰く、左為すも亦宜しく、右為すも亦宜しく、君子為りて宜しからざる無し、此を之れ謂うなり。」と。
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『山鹿語類』士道・明衣服之制次に着服之用あり。すべて衣冠より履に至り、佩玉笏に及ぶまで、常に着用することは不得已を本として、聖人其礼節を定め、服用する時は則威儀を正而非礼之動自止。是著用の制也。この間において君子大丈夫心を付る所あらば、服に因て自省に宜しく、服に因て自ら分を安んじ、服によつて視聴容顔の非僻自やむ。聖人の仁心尤可嘆也。されば衣冠を着服せんこと、聊も軽疎すべからず。袖のゆきを正し、表紋を合せ斉をそろへ、帯の緩急を節にして、紳をたれ佩をさげ、横刀をわきばさみ、首を正しく視容貌を正して、而して坐作動静を節にあたらしむべし。着用不正しては、衣服の宜と云にあらず。たとへ衣服甚正しと云とも、着用すること礼にあたらざれば、君子の本意に非ず。古の服は着用すること不正は、其服ならざるを以て、非僻之情自やましむ。今は其制あたらざれば、着用の法を以て詳にす。故に軽疎の生質には、衣服のゆきたけを長くして、手足妄動をやめしめ、重勤の質には衣服を薄短にして其動静を節せしむ。是平生所養の法也といへり。
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説苑・修文冠とは成人を別つ所以なり、德を脩め躬を束ねて以て自ら申飭す、其の邪心を檢し、其の正意を守る所以なり。君子始めて冠するや、必ず成禮を祝し、冠を加えて以て其の心を屬す、故に君子成人するや、必ず冠帶して以て事を行い、幼少嬉戲惰慢の心を棄てて、進德脩業の志に衎衎たり。是の故に服象を成さざるも、內心變ぜず、內心德を脩め、外禮文を被る、顯令の名を成す所以なり。是の故に皮弁素積、百王易えず、既に以て德を脩め、又以て容を正す。孔子曰く、「其の衣冠を正しくし、其の瞻視を尊くすれば、嚴然として人望みて之を畏る、亦威にして猛からずならずや?」と。
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礼記・表記子曰く、仁の成り難きこと久し、惟だ君子のみこれを能くす。是の故に君子は其の能くする所の者を以て人を病(せ)めず、人の能くせざる所の者を以て人を愧(は)じしめず。是の故に聖人の行いを制するや、制するに己を以てせず、民をして勧勉愧恥する所有りて、以て其の言を行わしむ。礼以てこれを節し、信以てこれを結び、容貌以てこれを文(かざ)り、衣服以てこれを移し、朋友以てこれを極め、民の一有らんことを欲するなり。《小雅》に曰く、「人に愧じず、天を畏れず」と。是の故に君子は其の服を服すれば、則ち文るに君子の容を以てす。其の容有れば、則ち文るに君子の辞を以てす。其の辞を遂ぐれば、則ち実たすに君子の徳を以てす。是の故に君子は其の服を服して其の容無きを恥じ、其の容有りて其の辞無きを恥ず。其の辞有りて其の徳無きを恥じ、其の徳有りて其の行無きを恥ず。是の故に君子は衰絰(さいてつ)すれば則ち哀色有り、端冕(たんべん)すれば則ち敬色有り、甲冑すれば則ち辱むべからざるの色有り。《詩》に云う、「惟れ鵜(てい)梁に在り、其の翼を濡らさず。彼の記(き)の子、其の服に称(かな)わず」と。
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説苑・說叢萬物其の本を得る者は生じ、百事其の道を得る者は成る。道の在る所、天下之に歸す。德の在る所、天下之を貴ぶ。仁の在る所、天下之を愛す。義の在る所、天下之を畏る。屋漏るる者は民之を去り、水淺き者は魚之に逃げ、樹高き者は鳥之に宿り、德厚き者は士之に趨り、禮有る者は民之を畏れ、忠信なる者は士之に死す。衣弊ると雖も、行は必ず脩む。頭亂ると雖も、言は必ず治む。時は之に應ずるに在り、為は之に因るに在り。伐つ所にして其の福に當たれば五たびす。伐つ所にして當たらざれば其の禍十たびす。