説苑 / 辨物
哀公射而中稷,其口疾不肉食,祠稷而問善卜之巫官,巫官變曰:「稷負五種,託株而從天下,未至於地而株絕,獵谷之老人張衽以受之,何不告祀之?」公從之,而疾去。
新字:哀公射而中稷,其口疾不肉食,祠稷而問善卜之巫官,巫官変曰:「稷負五種,託株而従天下,未至於地而株絶,猟谷之老人張衽以受之,何不告祀之?」公従之,而疾去。
書き下し
哀公射て稷(しょく)に中(あ)つ。其の口疾(や)みて肉を食らわず。稷を祠りて善く卜する巫官に問う。巫官変じて曰わく、「稷五種を負い、株に託して天より下る。未だ地に至らずして株絶ゆ。獵谷(りょうこく)の老人衽(じん)を張りて以て之を受く。何ぞ之を告祀せざる。」公之に従いて、疾去る。
現代語訳
哀公が矢を射て稷を象った像に命中させた。すると哀公の口が病んで肉を食べられなくなった。稷を祀り、占いに優れた巫官に尋ねた。巫官は神がかりの様子になって言った。「稷は五種類の穀物を背負い、株に身を託して天から下ってきました。まだ地に至らないうちに株が絶えてしまいました。獵谷の老人が衣の裾を広げてこれを受け止めたのです。どうしてこのことを告げ祀らないのですか。」哀公はこれに従うと、病は去った。
解説
哀公は不用意に穀物神の像を射て侵犯し、その報いとして原因不明の病を得るが、巫官の言葉によって稷という穀物の恵みがどのようにして人の手に渡ったかという由来を丁重に祀ることで、ようやく癒される。この短い逸話が伝えるのは、日々当たり前のように享受している恵みの由来や、それを支えてきた無名の労苦への敬意を欠いたときに、目に見えない不調和が生じるという教訓である。現代においても、成果や恩恵を当然のものとして粗雑に扱う者は、いずれその源泉との関係に軋みを生じさせることになる。
この章句が説くこと
哀公稷恵みへの敬意