説苑 / 雜言
孔子曰:「終日言不遺己之憂,終日行不遺己之患,唯智者有之。故恐懼所以除患也,恭敬所以越難也;終身為之,一言敗之,可不慎乎!」
書き下し
孔子曰く、「終日言いて己の憂いを遺さず、終日行いて己の患いを遺さざるは、唯だ智者のみ之有り。故に恐懼するは患いを除く所以なり、恭敬するは難きを越ゆる所以なり。終身之を為して、一言之を敗る、慎まざる可けんや」と。
現代語訳
孔子は言った。「一日中話し続けても自分に憂いを残さず、一日中行動し続けても自分に患いを残さない、そのようなことができるのは、ただ知恵ある者だけである。だから恐れ慎むことは患いを取り除く手段であり、恭しく敬うことは困難を乗り越える手段である。生涯かけてこれを実践し続けても、たった一言でそれを台無しにしてしまうことがある。慎まずにいられようか」と。
解説
どれほど長く言葉を慎み行動を律してきても、たった一言の油断がそれまでの積み重ねを台無しにしてしまうという孔子の警告は、信用というものの脆さを鋭く突く。現代においても、長年かけて築いた信頼関係が、一度の不用意な発言や軽率な行動によって一瞬で崩れ去る例は数え切れない。この章が教えるのは、恐れ慎む心と恭しく敬う態度こそが困難を乗り越え患いを遠ざける唯一の方法であり、生涯にわたる慎重さの実践は、一瞬の油断によってすべてが無に帰しうるという緊張感を持ち続けることの大切さである。
この章句が説くこと
慎重さ信用の脆さ恭敬
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