説苑 / 雜言
子路將行,辭於仲尼,曰:「贈汝以車乎?以言乎?」子路曰:「請以言!」仲尼曰:「不強不遠,不勞無功,不忠無親,不信無復,不恭無禮。慎此五者,可以長久矣。」
新字:子路将行,辞於仲尼,曰:「贈汝以車乎?以言乎?」子路曰:「請以言!」仲尼曰:「不強不遠,不労無功,不忠無親,不信無復,不恭無礼。慎此五者,可以長久矣。」
書き下し
子路将に行かんとするに、仲尼に辞す。曰く、「汝に贈るに車を以てせんか、言を以てせんか」と。子路曰く、「請う言を以てせよ」と。仲尼曰く、「強からずんば遠からず、労せずんば功無し、忠ならずんば親無し、信ならずんば復無し、恭ならずんば礼無し。此の五者を慎めば、以て長久なる可し」と。
現代語訳
子路が旅立とうとして、孔子に別れを告げた。孔子は言った。「お前に贈り物をするのに、車にしようか、それとも言葉にしようか」と。子路は「どうか言葉をいただきたく存じます」と答えた。孔子は言った。「努め励まなければ遠くまで至らず、骨を折らなければ功績は生まれず、忠実でなければ親しみは得られず、信義がなければ返礼はなく、恭しさがなければ礼にかなわない。この五つのことを慎み守れば、長く久しく物事を続けられるだろう」と。
解説
車という物質的な贈り物と言葉という精神的な贈り物のどちらを選ぶかという問いかけに対し、子路が迷わず言葉を選んだところに、実利より教えを重んじる師弟関係の理想が表れている。孔子が贈った五つの戒め――努力・労苦・忠実・信義・恭敬――はいずれも地道で目立たない徳目だが、これらを欠けば遠くまで至ることも、功を為すことも、人間関係を長く保つこともできないと説く。現代のビジネスでも、目先の便利さや物質的な支援よりも、長く役立つ言葉や教えの方がはるかに価値を持つことがあり、この逸話は餞別として何を贈るべきかという普遍的な問いに一つの答えを示している。
この章句が説くこと
餞別五つの戒め実利より教え
関連する章句
-
孔子家語・子路初見子路将に行かんとし、孔子に辞す。子曰わく、「汝に贈るに車を以てせんか、汝に贈るに言を以てせんか。」子路曰わく、「請う言を以てせん。」孔子曰わく、「強めずんば達せず、労せずんば功無く、忠ならずんば親無く、信ならずんば復無く、恭ならずんば礼を失う。此の五者を慎まんのみ。」子路曰わく、「由請う終身之を奉ぜん。敢えて問う、親交親しみを取るは若何、言寡くして行う可きは若何、長く善士と為りて犯す無きは若何。」孔子曰わく、「汝の問う所苞ねて五者の中に在り。親交親しみを取るは、其れ忠なり。言寡くして行う可きは、其れ信ならんか。長く善士と為るは、礼を犯す無きなり。」
-
説苑・雜言子路行くに、仲尼に辞して曰く、「敢えて問う、新交親しみを取ること若何。言寡くして行う可きこと若何。長く善士と為りて犯す無きこと若何」と。仲尼曰く、「新交親しみを取るは、其れ忠か。言寡くして行う可きは、其れ信か。長く善士と為りて犯す無きは、其れ礼か」と。
-
説苑・敬慎顔回将に西遊せんとし、孔子に問いて曰わく、「何を以て身を為さん」と。孔子曰わく、「恭敬忠信、以て身を為すべし。恭なれば則ち衆を免れ、敬なれば則ち人之を愛し、忠なれば則ち人之に与し、信なれば則ち人之を恃む。人の愛する所、人の与する所、人の恃む所なれば、必ず患いを免れん。以て国家に臨むべし、何ぞ身に於てをや。故に比するに数えずして疏に比するは、亦た遠からずや。中を修めずして外を修むるは、亦た反せずや。先に事を慮らずして、難に臨みて乃ち謀るは、亦た晩からずや」と。
-
説苑・雜言孔子将に行かんとするに、蓋無し。弟子曰く、「子夏に蓋有り、以て行く可し」と。孔子曰く、「商の人と為りや、甚だ財に短し。吾聞く、人と交わる者は、其の長ずる所を推し、其の短なる所を違く、故に能く久長なりと」と。
-
孔子家語・觀周周を去るに及び、老子之を送りて曰わく、「吾れ聞く、富貴なる者は人を送るに財を以てし、仁者は人を送るに言を以てすと。吾れ富貴なる能わずと雖も、竊かに仁者の號を借り、請う子を送るに言を以てせんか。凡そ當今の士、聰明深察にして死に近き者は、人を譏議することを好む者なり。博辯閎達にして其の身を危うくする者は、人の惡を發くことを好む者なり。己有るを以て人の子為ること無かれ、己を惡しとするを以て人の臣為ること無かれ。」孔子曰わく、「敬んで教えを奉ぜん。」周より魯に反り、道彌々尊し。遠方の弟子の進む者、蓋し三千。
-
荀子・大略篇曾子(そうし)行(さ)る。晏子(あんし)郊(こう)に従(したが)ひて曰く、「嬰(えい)之を聞く、君子は人に贈るに言を以てし、庶人は人に贈るに財を以てすと。嬰は貧しくして財無し、請(こ)ふ君子に仮(か)りて、吾子(ごし)に贈るに言を以てせん。乗輿(じょうよ)の輪は、太山(たいざん)の木なり。諸(これ)を檃栝(いんかつ)に示(お)くこと三月五月、幬采(とうさい)と為(な)り、敝(やぶ)るるも其の常に反(かへ)らず。君子の檃栝は、謹(つつし)まざるべからず。之を慎め。蘭茞(らんし)槁本(こうほん)も、蜜醴(みつれい)に漸(ひた)せば、一たび佩(お)びて之を易(か)ふ。正君も香酒に漸せば、讒(ざん)して得べきなり。君子の漸(ひた)る所、慎まざるべからず」と。