説苑 / 說叢
坎井無黿鼉者,隘也;園中無脩林者,小也。小忠,大忠之賊也;小利,大利之殘也。自清絕易,清人絕難;水激則悍,矢激則遠;人激於名,不毀為聲。下士得官以死,上士得官以生。禍福非從地中出,非從天上來,己自生之。
新字:坎井無黿鼉者,隘也;園中無脩林者,小也。小忠,大忠之賊也;小利,大利之残也。自清絶易,清人絶難;水激則悍,矢激則遠;人激於名,不毀為声。下士得官以死,上士得官以生。禍福非従地中出,非従天上来,己自生之。
書き下し
坎井に黿鼉無きは、隘ければなり。園中に脩林無きは、小なればなり。小忠は、大忠の賊なり。小利は、大利の殘なり。自ら清きは絕えて易く、人を清くするは絕えて難し。水激すれば則ち悍く、矢激すれば則ち遠し。人は名に激せられ、毀たれずして聲を為す。下士は官を得て以て死し、上士は官を得て以て生く。禍福は地中より出づるに非ず、天上より來るに非ず、己自ら之を生ず。
現代語訳
浅い井戸に大亀やわにがいないのは、その井戸が狭いからである。庭の中に大木の茂る林がないのは、その庭が小さいからである。小さな忠義は、かえって大きな忠義を損なうものである。小さな利益は、かえって大きな利益を損なうものである。自分自身を清く保つことは非常に容易だが、他人を清くさせることは非常に難しい。水は激しく流れれば勢いが荒々しくなり、矢は勢いよく放たれれば遠くまで飛ぶ。人は名誉によって奮い立たされ、傷つけられなくとも自ずから評判を作る。下等な士は官職を得ることでかえって身を滅ぼし、上等な士は官職を得ることでかえって生き延びる。禍福は地の中から湧き出るものでもなければ、天上から降ってくるものでもない。自分自身がそれを生み出すのである。
解説
器の小ささが可能性を狭めるという冒頭の比喩から始まり、小さな忠義や利益への固執がかえって大局を損なうという逆説、自己修養と他者教化の難易差、そして禍福自招という結論へと至る章である。「小忠は、大忠の賊なり。小利は、大利の殘なり」は、目先の小さな義理立てや利益にとらわれることが、結果としてより大きな忠義や利益を損なうという構造を鋭く見抜いており、近視眼的な判断の危険性を教えている。最後の「禍福は地中より出づるに非ず、天上より來るに非ず、己自ら之を生ず」という結語は、自己責任の思想を明快に言い切っており、あらゆる時代の処世訓の核心を成す一句である。
この章句が説くこと
自己責任小忠小利器の大きさ
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