説苑 / 說叢
無以淫泆棄業,無以貧賤自輕,無以所好害身,無以嗜欲妨生,無以奢侈為名,無以貴富驕盈。喜怒不當,是謂不明,暴虐不得,反受其賊,怨生不報,禍生於福。一言而非,四馬不能追;一言不急,四馬不能及。順風而飛,以助氣力;銜葭而翔,以備矰弋。
新字:無以淫泆棄業,無以貧賤自軽,無以所好害身,無以嗜欲妨生,無以奢侈為名,無以貴富驕盈。喜怒不当,是謂不明,暴虐不得,反受其賊,怨生不報,禍生於福。一言而非,四馬不能追;一言不急,四馬不能及。順風而飛,以助気力;銜葭而翔,以備矰弋。
書き下し
淫泆を以て業を棄つる無かれ、貧賤を以て自ら輕んずる無かれ、好む所を以て身を害する無かれ、嗜欲を以て生を妨ぐる無かれ、奢侈を以て名と為す無かれ、貴富を以て驕盈する無かれ。喜怒當たらざる、是を不明と謂う。暴虐得ざれば、反って其の賊を受く。怨み生じて報いざれば、禍は福より生ず。一言にして非なれば、四馬も追う能わず。一言にして急ならざれば、四馬も及ぶ能わず。風に順いて飛べば、以て氣力を助け、葭を銜みて翔れば、以て矰弋に備う。
現代語訳
放埓にふけって仕事を捨ててはならず、貧しく身分が低いからといって自分を卑下してはならず、好きなものによって身を害してはならず、欲望によって生命を損なってはならず、奢侈によって名声を得ようとしてはならず、身分の高さや富によって驕り高ぶってはならない。喜びや怒りが適切でないことを「不明」という。暴虐が思うようにいかなければ、かえってその報いを自分自身が受ける。怨みが生じたのに報いなければ、禍いは幸福の中から生じてくる。ひとたび発した言葉が誤りであれば、四頭立ての馬車をもってしても追いつくことはできない。ひとたび発した言葉が急を要するのに遅ければ、四頭立ての馬車をもってしても間に合わない。風向きに従って飛べば体力を助けることができ、葦をくわえて飛べば矢による網や弋(いぐるみ)への備えとなる。
解説
自制と節度に関する六つの戒めから始まり、感情の制御、因果応報、そして発言の重みへと展開する一節である。「一言にして非なれば、四馬も追う能わず」は、一度発した言葉は取り返しがつかないという教えであり、SNSなどで発言が瞬時に拡散する現代においてこそ切実な警句となる。また風に乗り葦をくわえて飛ぶ鳥の比喩は、自らの力だけに頼らず環境や備えを活かして安全に事を運ぶ知恵を示しており、無謀な奢りを戒める前半の教えと呼応している。
この章句が説くこと
自制因果応報言葉の重み
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