説苑 / 權謀
鄭桓公將欲襲鄶,先問鄶之辨智果敢之士,書其名姓,擇鄶之良臣而與之,為官爵之名而書之,因為設壇於門外而埋之。釁之以猳,若盟狀。鄶君以為內難也,盡殺其良臣。桓公因襲之,遂取鄶。
新字:鄭桓公将欲襲鄶,先問鄶之弁智果敢之士,書其名姓,択鄶之良臣而与之,為官爵之名而書之,因為設壇於門外而埋之。釁之以猳,若盟状。鄶君以為內難也,尽殺其良臣。桓公因襲之,遂取鄶。
書き下し
鄭の桓公將に鄶を襲はんと欲し、先づ鄶の辨智果敢の士を問ひ、其の名姓を書し、鄶の良臣を擇びて之に與へ、官爵の名を爲して之を書し、因りて壇を門外に設けて之を埋む。之に釁するに猳を以てし、盟状の若くす。鄶君以て內難と爲し、盡く其の良臣を殺す。桓公因りて之を襲ひ、遂に鄶を取る。
現代語訳
鄭の桓公が鄶を襲おうと考え、まず鄶国で弁が立ち知略に富み果敢な人物を調べ上げてその姓名を書き記し、鄶の優れた臣下たちを選んでそれぞれに官職と爵位を与えるという名目を書き記した。そして門の外に祭壇を設けてこの文書を土中に埋め、豚を犠牲として血を塗り、まるで盟約を交わしたかのような跡を作った。鄶の君主はこれを内部の裏切りの証拠と思い込み、優れた臣下たちをことごとく殺してしまった。桓公はその隙をついて鄶を襲い、ついに鄶を奪い取った。
解説
桓公は実際には何の接触もしていないのに、あたかも鄶の優秀な臣下たちと内通していたかのような偽の証拠を、手の込んだ儀式の跡という形で作り上げる。鄶の君主はその偽装された「証拠らしきもの」を鵜呑みにし、皮肉にも自国で最も有能で頼りになるはずの人材を自らの手で粛清してしまう。外部からの直接攻撃ではなく、組織内部の疑心暗鬼を煽って自滅させるこの手口は、真偽を確認する手立てを持たない指導者がいかに脆いかを物語っている。証拠らしきものを見せられたとき、その出所や作為の可能性を冷静に検証する仕組みがなければ、組織は敵の手を借りずとも自らの最も優れた人材を失いかねないという、恐ろしい教訓である。
この章句が説くこと
偽装工作内部粛清証拠の検証