説苑 / 權謀
叔向之殺萇弘也,數見萇弘於周。因佯遺書曰:「萇弘謂叔向曰:『子起晉國之兵以攻周,吾廢劉氏而立單氏。』」劉氏請之。君曰:「此萇弘也。」乃殺之。
新字:叔向之殺萇弘也,数見萇弘於周。因佯遺書曰:「萇弘謂叔向曰:『子起晉国之兵以攻周,吾廃劉氏而立単氏。』」劉氏請之。君曰:「此萇弘也。」乃殺之。
書き下し
叔向の萇弘を殺すや、數〻萇弘に周に見ゆ。因りて佯りて書を遺ひて曰く、「萇弘叔向に謂ひて曰く、『子晉國の兵を起して以て周を攻めよ。吾劉氏を廢して單氏を立てん』と」と。劉氏之を請ふ。君曰く、「此れ萇弘なり」と。乃ち之を殺す。
現代語訳
叔向が萇弘を陥れようとしたとき、たびたび周に赴いて萇弘に会いに行った。そうしておいて、わざと書状を(周の宮中に)落とし忘れたふりをして残した。その書状には「萇弘が叔向に語ったことには、『あなたは晋国の兵を起こして周を攻めなさい。私は劉氏を廃して単氏を立てましょう』とあった」と書かれていた。劉氏がこれを見て(周の君主に)訴え出た。周の君主は「これは萇弘の仕業だ」と判断し、萇弘を処刑した。
解説
叔向はまず萇弘のもとに何度も足を運んで親密な関係にあるという既成事実を積み重ね、その上で偽造した書状をわざと落として発覚させるという二段構えの罠を仕掛ける。頻繁な訪問という事実が、偽造書状の内容にリアリティを与え、萇弘に弁明の余地を与えないまま処刑にまで追い込む。人間関係における「親密さの証拠」そのものが、悪用されれば当人を陥れる材料になり得るという恐ろしさをこの逸話は示している。表面上の付き合いの深さや頻度だけで相手の言動の真偽を判断してしまう危うさ、そして偽造された証拠が独り歩きすることの怖さを、この短い挿話は端的に伝えている。
この章句が説くこと
讒言と偽造親密さの悪用借刀殺人