説苑 / 權謀
楚莊王欲伐陳,使人視之。使者曰:「陳不可伐也。」莊王曰:「何故?」對曰:「其城郭高,溝壑深,蓄積多,其國寧也。」王曰:「陳可伐也。夫陳,小國也,而蓄積多,蓄積多則賦斂重,賦斂重則民怨上矣。城郭高,溝壑深,則民力罷矣。」興兵伐之,遂取陳。
新字:楚荘王欲伐陳,使人視之。使者曰:「陳不可伐也。」荘王曰:「何故?」対曰:「其城郭高,溝壑深,蓄積多,其国寧也。」王曰:「陳可伐也。夫陳,小国也,而蓄積多,蓄積多則賦斂重,賦斂重則民怨上矣。城郭高,溝壑深,則民力罷矣。」興兵伐之,遂取陳。
書き下し
楚の莊王陳を伐たんと欲し、人をして之を視しむ。使者曰く、「陳伐つべからず」と。莊王曰く、「何の故ぞ」と。對へて曰く、「其の城郭高く、溝壑深く、蓄積多く、其の國寧きなり」と。王曰く、「陳伐つべきなり。夫れ陳は小國なり、而も蓄積多し。蓄積多ければ則ち賦斂重し。賦斂重ければ則ち民上を怨む。城郭高く、溝壑深ければ、則ち民力罷る」と。兵を興して之を伐ち、遂に陳を取る。
現代語訳
楚の荘王は陳を討とうと考え、人を遣わして様子を見させた。使者は「陳は討つべきではありません」と言った。荘王が「なぜか」と問うと、使者は「城壁は高く、堀は深く、蓄えも多く、その国は安泰です」と答えた。荘王は言った。「それならば陳は討つべきだ。陳は小国であるのに蓄えが多い。蓄えが多いということは、それだけ税の取り立てが重いということだ。取り立てが重ければ、民は上に立つ者を怨んでいるはずだ。城壁が高く堀が深いのも、それだけ民の労力を疲弊させたということだ」と。そこで軍を興して陳を討ち、ついに陳を奪い取った。
解説
使者は「城郭高く溝壑深く蓄積多し」という表面的な強さを見て安全と判断したが、荘王は同じ事実を裏返し、それらの成果を実現するために課された重税と労役こそが民の怨みの温床だと読み解く。立派な設備や潤沢な蓄えといった外形的な充実ぶりは、それを支えるためにどれだけの負担が現場や末端にかかっているかという視点を欠けば、むしろ内部崩壊の予兆にすらなり得る。現代の組織でも、華やかな業績や豪華な設備の裏で、それを支える現場の疲弊や不満が蓄積していないかを見抜く力こそが、真に有能な指導者の眼力だと言えるだろう。
この章句が説くこと
表面と実態民の怨み裏を読む
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呂氏春秋・似順②荊の莊王、陳を伐たんと欲し、人をして之を視しむ。使者曰く、「陳は伐つ可からざるなり。」莊王曰く、「何の故ぞ。」對えて曰く、「城郭高く、溝洫深く、蓄積多ければなり。」寧國曰く、「陳は伐つ可きなり。夫れ陳は小國なり、而るに蓄積多きは、賦斂重ければなり。則ち民、上を怨む。城郭高く、溝洫深ければ、則ち民力罷る。兵を興して之を伐てば、陳は取る可きなり。」莊王、之を聽き、遂に陳を取る。
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説苑・奉使楚の莊王晉を伐たんと欲し、豚尹をして觀しむ。反りて曰く、「伐つべからざるなり。其の憂いは上に在り、其の樂しみは下に在り。且つ賢臣焉に在り、沈駒と曰う。」明年、又た豚尹をして觀しめ、反りて曰く、「可なり。初の賢人死せり。諂諛多く君の廬に在る者、其の君樂を好みて禮無し。其の下危うき處に以て上を怨む。上下心を離す。師を興して之を伐たば、其の民必ず反かん。」莊王之に從い、果たして其の言の如し。
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『淮南子』人間訓故に仁者は欲を以て生を傷らず、知者は利を以て義を害せず。聖人の思いは修く、愚人の思いは叕し。忠臣なる者は君の德を崇くするに務め、諂臣なる者は君の地を廣むるに務む。何を以て之を明らかにせん。陳の夏徵舒 其の君を弒す。楚の莊王 之を伐ち、陳人 令を聽く。莊王 有罪を討つを以て、卒を遣わして陳に戍らしむ。大夫 畢く賀す。申叔時 齊に使いし、反り還りて賀せず。莊王曰く「陳 無道を爲す。寡人 九軍を起こして以て之を討ち、暴亂を征し、罪人を誅す。群臣 皆な賀するに、子 獨り賀せざるは、何ぞや」と。申叔時曰く「牛を牽きて人の田を蹊る。田主 其の人を殺して其の牛を奪う。罪は則ち之れ有り、罰も亦た重し。今 君王 陳を以て無道と爲し、兵を興して攻め、因りて以て罪人を誅し、人を遣わして陳に戍らしむ。諸侯 之を聞かば、王を以て罪人を誅するに非ずして、陳國を貪ると爲さん。蓋し聞く、君子は義を棄てて以て利を取らずと」と。王曰く「善し」と。乃ち陳の戍を罷めて、陳の後を立つ。諸侯 之を聞き、皆な楚に朝す。此れ君の德を崇くするに務むる者なり。
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