説苑 / 權謀
趙簡子使人以明白之乘六,先以一璧,為遺於衛。衛叔文子曰:「見不意,可以生,故此小之所以事大也。今我未以往,而簡子先以來,必有故。」於是斬林除圍,聚斂蓄積,而後遣使者。簡子曰:「吾舉也,為不可知也。今既已知之矣,乃輟圍衛也。」
新字:趙簡子使人以明白之乗六,先以一璧,為遺於衛。衛叔文子曰:「見不意,可以生,故此小之所以事大也。今我未以往,而簡子先以来,必有故。」於是斬林除囲,聚斂蓄積,而後遣使者。簡子曰:「吾舉也,為不可知也。今既已知之矣,乃輟囲衛也。」
書き下し
趙簡子人をして明白の乘六を以てし、先んじて一璧を以てし、遺と爲して衛に於てせしむ。衛の叔文子曰く、「意はざるを見るは、以て生くべし。故に此れ小の大に事ふる所以なり。今我未だ以て往かざるに、簡子先んじて以て來る。必ず故有らん」と。是に於て林を斬り圍を除き、蓄積を聚斂して、而る後に使者を遣る。簡子曰く、「吾が舉は、知るべからざるを爲すなり。今既に已に之を知る。乃ち衛を圍むを輟む」と。
現代語訳
趙簡子は人を遣わして、立派に飾り立てた四頭立ての馬車を六台用意させ、さらにその前に璧を一つ贈らせ、衛に届けさせた。衛の叔文子は言った。「予期せぬ厚遇を受けたときこそ、それによって生き延びることもできる。だからこそ、小国が大国に仕える際にはこうした礼を尽くすものだ。しかし今、我々の方からは何もしていないのに、簡子の方から先に贈り物をしてきた。これには必ず何か裏があるはずだ」と。そこで林を切り開いて視界を確保し、包囲に備えて守りを固め、物資を集めて蓄えた上で、ようやく答礼の使者を送り出した。趙簡子はこれを知り、「我々の企ては、相手に気づかれないようにするためのものだった。しかし今やすでに気づかれてしまった」と言い、衛を包囲する計画を取りやめた。
解説
叔文子は、贈り物という一見友好的な行為の「順番」に着目する。通常、礼を尽くすのは小国が大国に対して行うものであり、大国である趙の側から先に贈り物をしてくるのは道理に反する。この些細な順序の逆転だけを手がかりに、叔文子は隠された侵攻計画を察知し、贈り物への返礼を急がず、まず防備を固めてから使者を送るという時間差の対応を取る。表面上の礼儀作法や慣習からわずかに外れた「順番の違和感」に気づけるかどうかが、危機を未然に防げるかどうかの分かれ目になるという、繊細な観察眼の重要性をこの逸話は伝えている。
この章句が説くこと
順序の違和感防備が先観察眼の繊細さ
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