説苑 / 奉使
景公使晏子使於楚。楚王進橘置削。晏子不剖而并食之。楚王曰:「橘當去剖。」晏子對曰:「臣聞之,賜人主前者,瓜桃不削,橘柚不剖。今萬乘無教,臣不敢剖,然臣非不知也。」
新字:景公使晏子使於楚。楚王進橘置削。晏子不剖而并食之。楚王曰:「橘当去剖。」晏子対曰:「臣聞之,賜人主前者,瓜桃不削,橘柚不剖。今万乗無教,臣不敢剖,然臣非不知也。」
書き下し
景公晏子をして楚に使いせしむ。楚王橘を進め削を置く。晏子剖かずして并せて之を食う。楚王曰く、「橘は當に剖くべし。」晏子對えて曰く、「臣之を聞く、人主の前に賜う者は、瓜桃は削らず、橘柚は剖かず、と。今萬乘教え無し。臣敢えて剖かざるなり。然れども臣知らざるに非ざるなり。」
現代語訳
斉の景公は晏子を楚への使者とした。楚王は橘を差し出し、皮を剥くための小刀を添えた。晏子は皮を剥かずにそのまま丸ごと食べた。楚王は言った。『橘は皮を剥いて食べるべきものだ。』晏子は答えた。『私はこう聞いております。君主の御前で賜り物を食べる際には、瓜や桃は皮を削らず、橘や柚も皮を剥かないものだと。今、あなた様からは特にそうせよとの教えがございませんでした。それゆえ私はあえて剥かなかったのです。とはいえ、私はその作法を知らなかったわけではございません。』
解説
楚王が用意した小刀を使わなかったことを咎められた晏子は、単なる無作法を詫びるのではなく、君主の御前での礼法という一般原則を引き合いに出し、指示がなければ剥かないのが正式な礼だと切り返した。しかも最後に「知らなかったわけではない」と付け加えることで、失礼を働いたのではなく、あえて礼にかなった振る舞いを選んだのだと相手に理解させている。些細な作法の違いを指摘されたとき、慌てて謝るのではなく、自分の行動にも根拠があることを冷静に説明できるかどうかは、異なる文化や慣習の間に立つ使者としての矜持を示す一例である。
この章句が説くこと
礼法使者の矜持機知