説苑 / 尊賢
魯人攻鄪,曾子辭於鄪君曰:「請出,寇罷而後復來,請姑毋使狗豕入吾舍。」鄪君曰:「寡人之於先生也,人無不聞;今魯人攻我而先生去我,我胡守先生之舍?」魯人果攻鄪而數之罪十,而曾子之所爭者九。魯師罷,鄪君復修曾子舍而後迎之。
新字:魯人攻鄪,曽子辞於鄪君曰:「請出,寇罷而後復来,請姑毋使狗豕入吾舎。」鄪君曰:「寡人之於先生也,人無不聞;今魯人攻我而先生去我,我胡守先生之舎?」魯人果攻鄪而数之罪十,而曽子之所争者九。魯師罷,鄪君復修曽子舎而後迎之。
書き下し
魯人鄪を攻む。曾子鄪君に辞して曰く、「請う出でん、寇罷みて後復た来らん、請う姑く狗豕をして吾が舎に入らしむる毋かれ」と。鄪君曰く、「寡人の先生に於けるや、人聞かざる無し。今魯人我を攻めて先生我を去らば、我胡ぞ先生の舎を守らんや」と。魯人果たして鄪を攻めて之を数うるに罪十あり、而して曾子の争う所の者九つなり。魯師罷みて、鄪君復た曾子の舎を修めて而る後に之を迎う。
現代語訳
魯の人々が鄪を攻めた。曾子は鄪君に別れを告げて言った。「どうか出て行かせてください。敵が引き上げたら再び戻って参ります。ただ、私の留守の間、私の家に犬や豚を入れないようにしてください」。鄪君は言った。「私が先生を敬っていることは、誰もが知らぬ者はない。今、魯の人々が我が国を攻めて先生が私のもとを去ってしまうなら、私はどうして先生の家を守っていられようか」。魯の人々は果たして鄪を攻めて、鄪君の罪十か条を数え上げたが、その中で曾子が(その通りだと)異議を唱えなかった、つまり事実と認めた項目は九つであった。魯の軍が引き上げると、鄪君は改めて曾子の家を修繕してから彼を迎え入れた。
解説
戦火が迫る中で曾子が真っ先に案じたのは自分の身の安全ではなく、留守宅が汚されないようにという些細な頼みであり、それに対し鄪君は世間の評判を気にしてでも曾子への礼を保とうとする。ところが実際に攻められると、鄪君の罪状十か条のうち九か条までもが事実であったという結末は痛烈である。賢者を厚遇する体面を整えることと、その賢者の諫言に基づいて実際に己の行いを正すこととの間には大きな隔たりがあり、人を敬うふりをして本質的な過ちを改めない君主の限界を、この逸話は容赦なく描き出している。
この章句が説くこと
体面諫言自省
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