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説苑 / 尊賢

宗衛相齊,遇逐罷歸舍,召門尉田饒等二十有七而問焉,曰:「士大夫誰能與我赴諸侯者乎?」田饒等皆伏而不對。宗衛曰:「何士大夫之易得而難用也!」饒對曰:「非士大夫之難用也,是君不能用也。」宗衛曰:「不能用士大夫何若?」田饒對曰:「廚中有臭肉,則門下無死士矣。今夫三升之稷不足於士;而君雁鶩有餘粟。紈素綺繡靡麗。堂楯從風雨弊,而士曾不得以緣衣;果園梨粟,後宮婦人摭以相擿,而士曾不得一嘗,且夫財者,君之所輕也;死者士之所重也,君不能用所輕之財,而欲使士致所重之死,豈不難乎哉?」於是宗衛面有慚色,逡巡避席而謝曰:「此衛之過也。」

新字:宗衛相斉,遇逐罷帰舎,召門尉田饒等二十有七而問焉,曰:「士大夫誰能与我赴諸侯者乎?」田饒等皆伏而不対。宗衛曰:「何士大夫之易得而難用也!」饒対曰:「非士大夫之難用也,是君不能用也。」宗衛曰:「不能用士大夫何若?」田饒対曰:「廚中有臭肉,則門下無死士矣。今夫三升之稷不足於士;而君雁鶩有余粟。紈素綺繡靡麗。堂楯従風雨弊,而士曽不得以縁衣;果園梨粟,後宮婦人摭以相擿,而士曽不得一嘗,且夫財者,君之所軽也;死者士之所重也,君不能用所軽之財,而欲使士致所重之死,豈不難乎哉?」於是宗衛面有慚色,逡巡避席而謝曰:「此衛之過也。」

書き下し

宗衛斉に相たりしが、逐われて罷りて舎に帰るに遇う。門尉田饒等二十有七人を召して問いて曰く、「士大夫誰か能く我と諸侯に赴く者ぞ」と。田饒等皆伏して対えず。宗衛曰く、「何ぞ士大夫の得易くして用い難きや」と。饒対えて曰く、「士大夫の用い難きに非ず、是れ君の用うる能わざるなり」と。宗衛曰く、「士大夫を用うる能わざるとは何若」と。田饒対えて曰く、「厨中に臭肉有れば、則ち門下に死士無し。今夫れ三升の稷、士に足らずして、君の雁鶩は粟余り有り。紈素綺繍靡麗なり。堂楯風雨に従いて弊るるも、士曾て以て衣を縁る得ず。果園の梨栗、後宮の婦人摭いて以て相い擿つるも、士曾て一嘗する得ず。且つ夫れ財なる者は、君の軽んずる所なり。死なる者は士の重んずる所なり。君輕んずる所の財を用うる能わずして、士をして重んずる所の死を致さしめんと欲す、豈に難からずや」と。是に於いて宗衛面に慚色有り、逡巡して席を避けて謝して曰く、「此れ衛の過ちなり」と。

現代語訳

宗衛は斉の宰相であったが罷免されて屋敷に戻った。門番の長・田饒ら二十七人を呼び「私とともに諸侯のもとへ赴いてくれる士大夫はいないか」と尋ねたが、皆平伏して答えなかった。「なぜ士大夫は得やすいのに用いるのは難しいのか」と問うと、田饒は「用いるのが難しいのではなく、あなたが用いることができないだけです」と答えた。理由を問われた田饒は言った。「台所に腐った肉があれば、命がけで仕える士はいなくなります。士には三升の粟すら十分に与えられていないのに、あなたの飼う雁や鴨には穀物が余っています。あなたは華麗な絹を着ておられますが、堂の欄干は朽ちるままで士は衣の縁を飾ることさえできません。後宮の婦人が果樹園の梨や栗を投げ合って遊んでいますが、士は一つも味わえません。財産はあなたが軽んじるものですが、死は士が重んじるものです。軽んじる財産すら用いず、士に重んじる命を差し出させようとするのは、なんと難しいことでしょうか。」宗衛は恥じ入り、席を避けて「これは私の過ちである」と謝った。

解説

宗衛は士大夫が動いてくれない理由を彼らの資質の問題だと考えるが、田饒は「厨中に臭肉有れば門下に死士無し」という強烈な比喩で、実は主君自身が贅沢に浪費しながら士への待遇を怠っていることこそが真因だと指弾する。命を差し出すという最大の犠牲を求めながら、日々の待遇という最小限の投資すら惜しむのは筋が通らないという指摘は、部下に献身や成果を求めながら正当な待遇や環境整備を怠る経営者・管理職への痛烈な警句であり、忠誠や覚悟は待遇の公正さと表裏一体であることを教えてくれる。

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