説苑 / 政理
景差相鄭,鄭人有冬涉水者,出而脛寒,後景差過之,下陪乘而載之,覆以上衽,晉叔向聞之曰:「景子為人國相,豈不固哉!吾聞良吏居之三月而溝渠修,十月而津梁成,六畜且不濡足,而況人乎?」
新字:景差相鄭,鄭人有冬渉水者,出而脛寒,後景差過之,下陪乗而載之,覆以上衽,晋叔向聞之曰:「景子為人国相,豈不固哉!吾聞良吏居之三月而溝渠修,十月而津梁成,六畜且不濡足,而況人乎?」
書き下し
景差、鄭に相たり。鄭人に冬水を渉る者有り、出でて脛寒し。後に景差之を過り、陪乗を下して之を載せ、覆うに上衽を以てす。晋の叔向之を聞きて曰く、「景子人国の相為るや、豈に固ならずや。吾聞く、良吏之に居りて三月にして溝渠修まり、十月にして津梁成る、六畜すら且つ足を濡らさず、而るを況んや人をや。」
現代語訳
景差が鄭の宰相となった。鄭のある人が冬に川を渉り、渉り終えて脛が冷え切っていた。その後、景差がそこを通りかかり、自分の車から供の者を降ろしてその人を車に乗せ、自分の上着を掛けてやった。晋の叔向はこれを聞いて言った。「景子(景差)は一国の宰相でありながら、なんと視野の狭いことか。私はこう聞いている、優れた役人がその地位にいれば、三ヶ月で溝や水路が整備され、十ヶ月で渡し場や橋が完成し、家畜でさえ足を濡らすことがなくなるという。ましてや人間ならなおさらだ。」
解説
景差が凍える一人の民に個人的な情けをかけた行為は、美談として語られがちだが、叔向はこれを痛烈に「視野の狭さ」だと批判する。宰相という立場にある者の仕事は、目の前の一人を助けることではなく、橋や水路といった制度・インフラを整備し、そもそも誰も冷たい川を渉らずに済む仕組みを作ることにあるという指摘である。個人の善意による対症療法と、地位に見合った構造的な解決策とを峻別するこの逸話は、現代のリーダーにも重い問いを突きつける。目の前の困っている一人に手を差し伸べる優しさと、制度を変えて多くの人を根本から救う責任とは次元の異なる仕事であり、地位が上がるほど後者が求められるのである。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
制度設計対症療法と根本解決為政者の視野
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