説苑 / 復恩
晉逐欒盈之族,命其家臣有敢從者死,其臣曰:「辛俞從之。」吏得而將殺之,君曰:「命汝無得從,敢從何也?」辛俞對曰:「臣聞三世仕於家者君之,二世者主之;事君以死,事主以勤,為之賜之多也。今臣三世於欒氏,受其賜多矣,臣敢畏死而忘三世之恩哉?」晉君釋之。
新字:晉逐欒盈之族,命其家臣有敢従者死,其臣曰:「辛俞従之。」吏得而将殺之,君曰:「命汝無得従,敢従何也?」辛俞対曰:「臣聞三世仕於家者君之,二世者主之;事君以死,事主以勤,為之賜之多也。今臣三世於欒氏,受其賜多矣,臣敢畏死而忘三世之恩哉?」晉君釈之。
書き下し
晋欒盈の族を逐ふ、其の家臣に敢へて従ふ者有らば死せしめよと命ず、其の臣曰く、「辛俞之に従はん」と。吏得て将に之を殺さんとす、君曰く、「汝に従ふを得る無からしめしに、敢へて従ふは何ぞや」と。辛俞対へて曰く、「臣聞く、三世家に仕ふる者は之を君とし、二世なる者は之を主とす、君に事ふるに死を以てし、主に事ふるに勤を以てす、之を賜ふ多きが為なり、と。今臣三世欒氏に於て、其の賜を受くること多し、臣敢へて死を畏れて三世の恩を忘れんや」と。晋君之を釈す。
現代語訳
晋が欒盈の一族を追放したとき、その家臣で欒盈に付き従う者があれば死罪にすると命じた。ところがその家臣の一人が「辛俞はそれでも彼に従うつもりです」と言った。役人は彼を捕らえて処刑しようとした。君主は「お前には従ってはならぬと命じてあったのに、あえて従うとはどういうことか」と尋ねた。辛俞は答えた、「私が聞くところでは、三代にわたってその家に仕えた者はその家の当主を君主として扱い、二代の場合は主人として扱う、といいます。君主に仕えるには命をかけ、主人に仕えるには勤勉さをもってする、それはその家から受けた恩恵の多さに応じてのことです。今、私は三代にわたって欒氏に仕え、その恩恵を多く受けてまいりました。私がどうして死を恐れて三代にわたる恩を忘れられましょうか」と。晋の君主はこれを聞いて彼を赦した。
解説
この章句が説くこと
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葉隠・聞書第一途中にて俄雨(にわかあめ)にあいて、濡れじとて道を急ぎ走り、軒下(のきした)などを通りても、濡るる濡るる事は替わらざるなり。初めより思いはまりて濡るる濡るる時、心に苦しみなく濡るる濡るる事は同じ。これ万(よろ)づにわたる心得なり。
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葉隠・聞書第一打返(うちがえ)しは踏懸(ふみか)けて切(き)り殺さるるまで、赤穂義士(あこうぎし)の敵討(かたきうち)は延び延び。打返しの仕様(しよう)は、踏懸けて切り殺さるるまでなり。これにて恥(はじ)にならぬなり。仕果(しは)たすべしと思ふゆゑ、間(ま)に合はず。向(むこう)は大勢(おおぜい)などと云ひて時を移し、しまり止(どめ)になる相談に極(きわ)まるなり。相手何千人もあれ、片端(かたはし)より撫切(なでぎ)りと思ひ定めて、立ち向ふまでにて成就(じょうじゅ)なり。多分(たぶん)仕(し)済ますものなり。又(また)浅野殿(あさのどの)浪人(ろうにん)夜討(ようち)も、泉岳寺(せんがくじ)にて腹切らぬが落度(おちど)なり。又主(しゅ)を討たせて、敵(かたき)を討つ事延び延びなり。若(も)し、その内に吉良殿(きらどの)病死の時は残念千万なり。上方衆(かみがたしゅう)は智慧(ちえ)かしこきゆゑ、褒めらるる仕様は上手(じょうず)なれども、長崎喧嘩(ながさきけんか)の様に無分別(むふんべつ)にする事はならぬなり。又曾我殿(そがどの)夜討も殊(こと)の外(ほか)の延引(えんいん)。幕(まく)の紋(もん)見物(けんぶつ)の時、祐成(すけなり)図(ず)をはづしたり。不運の事なり。五郎(ごろう)申し様(よう)見事なり。総(そう)じてかやうの批判(ひはん)はせぬものなれども、これも武道(ぶどう)の吟味(ぎんみ)なれば申すなり。前方(ぜんぽう)に吟味して置かねば、行(ゆ)き当りて分別(ふんべつ)出来(でき)合はぬゆゑ、おおかた恥になり候。話を聞き覚え、物の本を見るも、かねての覚悟のためなり。就中(なかんずく)、武道は今日の事も知らずと思ひて、日々夜々(ひびよよ)に箇条(かじょう)を立てて吟味すべき事なり。時の行掛(ゆきがか)りにて勝負はあるべし。恥をかかぬ仕様は別(べつ)なり。死ぬまでなり。これには智慧も業(わざ)も入らぬなり。死ぬまでといふは勝負を考へず、無二無三(むにむざん)に死狂(しにぐる)ひするばかりなり。これにて夢(ゆめ)覚むるなり。
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