説苑 / 貴德
鄭伐宋,宋人將與戰,華元殺羊食士,其御羊斟不與焉,及戰,曰:「疇昔之羊羹,子為政;今日之事,我為政。」與華元馳入鄭師,宋人敗績。
新字:鄭伐宋,宋人将与戦,華元殺羊食士,其御羊斟不与焉,及戦,曰:「疇昔之羊羹,子為政;今日之事,我為政。」与華元馳入鄭師,宋人敗績。
書き下し
鄭宋を伐つ、宋人将に与に戦はんとす、華元羊を殺して士に食はしむ、其の御羊斟与らず、戦ふに及び、曰く、「疇昔の羊羹は、子之が政を為す、今日の事は、我之が政を為さん」と。華元と与に馳せて鄭師に入り、宋人敗績す。
現代語訳
鄭が宋を攻めた。宋の人々は戦おうとし、華元は羊を殺して兵士たちにご馳走をふるまった。しかし彼の御者である羊斟にはその羊肉が回ってこなかった。戦いに臨んだとき、羊斟は言った、「先日の羊のスープでは、あなたが取り仕切っていた。しかし今日のこの一件は、私が取り仕切らせてもらう」と。そう言って羊斟は華元を乗せたまま馬車を鄭の軍勢の中へと駆け込ませ、宋軍は大敗した。
解説
戦の勝敗を分けたのは、大局の戦略ではなく、ご馳走の分配という些細な不公平だったという衝撃的な逸話である。華元は将としての大局的判断には長けていたのだろうが、自分に最も近い立場にいる御者への配慮を怠り、その恨みが決定的な裏切りとなって全軍を巻き込む破局を招いた。組織においても、経営判断の巧拙以上に、身近な部下やスタッフへの日常的な公平さの欠如が、思わぬ形で全体を崩壊させるリスクをはらむという警鐘である。地位の高低にかかわらず、目の前にいる人間への配慮を怠らないことの重要性を、極端な形で示す逸話といえる。
この章句が説くこと
身近な不公平恨み組織崩壊
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