説苑 / 貴德
景公探爵鷇,鷇弱故反之,晏子聞之,不待請而入見,景公汗出惕然,晏子曰:「君胡為者也?」景公曰:「我採爵鷇,鷇弱故反之。」晏子逡巡北面再拜而賀之:「吾君有聖王之道矣。」景公曰:「寡人入探爵鷇,鷇弱故反之,其當聖王之道者何也?」晏子對曰:「君探爵鷇,鷇弱故反之,是長幼也;吾君仁愛,禽獸之加焉,而況於人乎?此聖王之道也。」
新字:景公探爵鷇,鷇弱故反之,晏子聞之,不待請而入見,景公汗出惕然,晏子曰:「君胡為者也?」景公曰:「我採爵鷇,鷇弱故反之。」晏子逡巡北面再拝而賀之:「吾君有聖王之道矣。」景公曰:「寡人入探爵鷇,鷇弱故反之,其当聖王之道者何也?」晏子対曰:「君探爵鷇,鷇弱故反之,是長幼也;吾君仁愛,禽獣之加焉,而況於人乎?此聖王之道也。」
書き下し
景公爵鷇を探る、鷇弱ければ故に之を反す、晏子之を聞き、請ふを待たずして入り見る、景公汗出でて惕然たり、晏子曰く、「君何為る者ぞや」と。景公曰く、「我爵鷇を採るに、鷇弱ければ故に之を反す」と。晏子逡巡し北面再拝して之を賀して曰く、「吾が君聖王の道有り」と。景公曰く、「寡人爵鷇を探るに入り、鷇弱ければ故に之を反す、其れ聖王の道に当る者は何ぞや」と。晏子対へて曰く、「君爵鷇を探るに、鷇弱ければ故に之を反すは、是れ長幼を長ずるなり。吾が君仁愛にして、禽獣に之を加ふ、而るを況んや人に於てをや。此れ聖王の道なり」と。
現代語訳
景公が雀の雛を捕ろうとしたが、雛がまだ弱々しかったのでそのまま元に戻した。晏子はこれを聞き、取り次ぎを待たずに参上した。景公は汗をかいて動揺していた。晏子が「殿は何をなさったのですか」と尋ねると、景公は「私は雀の雛を捕ろうとしたが、雛が弱々しかったのでそのまま戻したのだ」と答えた。晏子はためらいながら北を向いて再拝し、これを祝って言った、「我が君には聖王の道がおありです」と。景公が「私は雀の雛を捕ろうとして、弱々しいので戻しただけだが、それのどこが聖王の道にあたるというのか」と尋ねると、晏子は答えた、「殿が雀の雛を捕ろうとして、弱いからと元に戻されたのは、年少者をいたわる心にほかなりません。我が君は仁愛の心をお持ちで、それを鳥獣にまで及ぼされました。まして人間に対してはなおさらでしょう。これこそ聖王の道です」と。
解説
この章句が説くこと
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葉隠・聞書第一人に意見をし、諸人(しょにん)一味同心(いちみどうしん)に主君の御用に立つが大慈悲(だいじひ)なり。人に意見をして疵(きず)を直すと云うは大切の事、大慈悲、御奉公の第一にて候。意見の仕様(しよう)、大いに骨を折ることなり。人の上(うえ)の善悪を見出(みいだ)すは安き事なり。それを意見するも安き事なり。大かたは、人の好かぬ言い憎(にく)き事を云うが親切のように思い、それを請(う)けねば力に及ばざる事と云うなり。何の益にも立たず。人に恥をかかせ、悪口(あっこう)すると同じ事なり。我が胸はらしに云うまでなり。意見と云うは、まずその人の請くるか請けぬかの気を見分け、入魂(じっこん)になり、此方(こなた)の言葉を兼々(かねがね)信仰(しんこう)ある様に仕(し)なしてより、好きの道などよりぼつぼつ引入(ひきい)れ、云い様(よう)種々(しゅじゅ)に工夫し、時節を考え、或(あるい)は文通、或は暇乞(いとまごい)などの折から、我が身の悪事を申出(もうしい)だし、云わずしても思い当る様にか、まずよき処を褒め立て、気を引立て工夫し、渇(かわ)く時水飲む様に請合(うけあ)はせ、疵直るが意見なり。殊(こと)の外仕(し)にくきものなり。年来(ねんらい)の悪事、大体にて直らず、我が身にも覚えあり。諸朋輩(しょほうばい)兼々入魂をし僻(ひが)みを直し、一味同心に御用に立つ所なれば御奉公・大慈悲なり。然(しか)るに恥を与えては何しに直り申すべきや。
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