説苑 / 建本
孔子曰:「君子務本,本立而道生。」夫本不正者末必倚,始不盛者終必衰。詩云:「原隰既平,泉流既清」。本立而道生,春秋之義;有正春者無亂秋,有正君者無危國,易曰:「建其本而萬物理,失之毫釐,差以千里」。是故君子貴建本而重立始。
新字:孔子曰:「君子務本,本立而道生。」夫本不正者末必倚,始不盛者終必衰。詩云:「原隰既平,泉流既清」。本立而道生,春秋之義;有正春者無乱秋,有正君者無危国,易曰:「建其本而万物理,失之毫釐,差以千里」。是故君子貴建本而重立始。
書き下し
孔子曰わく、「君子は本を務む、本立ちて道生ず」と。夫れ本正しからざる者は末必ず倚り、始め盛んならざる者は終わり必ず衰う。詩に云う、「原隰既に平らかに、泉流既に清し」と。本立ちて道生ずるは、春秋の義なり。正しき春有る者は乱れたる秋無く、正しき君有る者は危うき国無し。易に曰わく、「其の本を建てて万物理まる、之を失すること毫釐にして、差うこと千里を以てす」と。是の故に君子は本を建つることを貴び、始めを立つることを重んず。
現代語訳
孔子は言った。「君子は根本に力を注ぐ。根本が定まれば、そこから自然と道が生まれる」と。そもそも根本が正しくない者は末端も必ず傾き、始めが盛んでない者は終わりも必ず衰える。詩経に「高原と低湿地が平らかに整い、泉の流れも既に清らかである」とあるのは、根本が整えば万事が自然に整うことの喩えである。根本が立てば道が生まれるというのは春秋の教えの真意であり、正しい春がある年には乱れた秋はなく、正しい君主がいる国には危うさはない。易経にも「その根本を建てれば万物が治まる。わずかな誤差が、後に千里もの隔たりとなる」とある。だからこそ君子は根本を建てることを貴び、物事の始まりを大切にするのである。
解説
建本篇の巻頭を飾るこの章は、あらゆる物事において根本を正しく据えることの重要性を説く。わずかな始めのずれが最終的には千里もの隔たりを生むという指摘は、現代の仕事や人生設計にもそのまま当てはまる。プロジェクトの初期設計、人間関係の始まり方、習慣の最初の一歩――これらを疎かにして後から軌道修正しようとしても、既に生じた歪みは容易には正せない。根本を疑い、始まりに時間と注意を注ぐことこそが、遠回りに見えて実は最短の道なのだという逆説を、この章は静かに突きつけている。
この章句が説くこと
根本始め道
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