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戦国策 / 司馬憙三相中山

司馬憙三相中山,陰簡難之。田簡謂司馬憙曰:「趙使者來屬耳,獨不可語陰簡之美乎?趙必請之,君與之,即公無內難矣。君弗與趙,公因勸君立之以為正妻。陰簡之德公,無所窮矣。」果令趙請,君弗與。司馬憙曰:「君弗與趙,趙王必大怒;大怒則君必危矣。然則立以為妻,固無請人之妻不得而怨人者也。」田簡自謂取使,可以為司馬憙,可以為陰簡,可以令趙勿請也。

新字:司馬憙三相中山,陰簡難之。田簡謂司馬憙曰:「趙使者来属耳,独不可語陰簡之美乎?趙必請之,君与之,即公無內難矣。君弗与趙,公因勧君立之以為正妻。陰簡之徳公,無所窮矣。」果令趙請,君弗与。司馬憙曰:「君弗与趙,趙王必大怒;大怒則君必危矣。然則立以為妻,固無請人之妻不得而怨人者也。」田簡自謂取使,可以為司馬憙,可以為陰簡,可以令趙勿請也。

書き下し

司馬憙三たび中山に相たり、陰簡之を難ず。田簡司馬憙に謂いて曰く、「趙の使者来たりて耳に属す、独り陰簡の美を語る可からざらんや。趙必ず之を請わん、君之に与えば、即ち公内難無からん。君趙に与えざれば、公因りて君に之を立てて以て正妻と為さんことを勧めよ。陰簡の公を徳とすること、窮まる所無からん」と。果たして趙をして請わしむるも、君与えず。司馬憙曰く、「君趙に与えざれば、趙王必ず大いに怒らん。大いに怒らば則ち君必ず危うからん。然らば則ち立てて以て妻と為すは、固より人の妻を請いて得ずして人を怨む者無きなり」と。田簡自ら使を取るを謂い、以て司馬憙の為にす可く、以て陰簡の為にす可く、以て趙をして請わしむる勿からしむ可し。

現代語訳

司馬憙は三たび中山の宰相を務めていたが、陰簡(中山君の寵妃)は彼を嫌っていた。田簡は司馬憙に言った。「趙の使者が今度やって来ますが、そのとき陰簡の美しさを語ってはいかがでしょう。趙は必ず彼女を求めてくるでしょう。もし君がそれに応じれば、あなたには内々の憂いがなくなります。君がもし趙の求めに応じなければ、あなたはそこで君に彼女を正妻に立てるよう勧めればよいのです。そうすれば陰簡はあなたの恩に、この上なく感謝することになるでしょう」。果たして趙は彼女を求めてきたが、君はこれに応じなかった。司馬憙は言った。「君が趙の求めに応じなければ、趙王は必ず激怒するでしょう。激怒すれば君は必ず危うくなります。それならば彼女を正妻に立てるのがよろしいでしょう。もともと、人の妻になることを求めて得られなかったからといって、その人を恨む者などいないものです」。こうして田簡はみずから使者との窓口を取り仕切り、この一件を司馬憙のためにも、陰簡のためにも、また趙に彼女を求めさせないようにするためにも役立てたのであった。

解説

自分を敵視する寵妃陰簡との関係を修復するため、司馬憙が田簡の知恵を借りて仕掛けた一計です。まず趙という外部の大国に陰簡の美しさを吹き込ませ、趙に嫁がせるか正妻に立てるかという二択を中山君に迫る状況を作り出します。中山君が趙への譲渡を拒めば、必然的に陰簡を正妻に立てる以外の選択肢がなくなり、結果的に陰簡は司馬憙に恩義を感じることになるという筋書きです。自分を嫌う相手をおとしめるのではなく、その相手にとって最大の利益(正妻の座)を用意することで、逆に恩を売り敵を味方に変えるという発想が特徴的です。対立関係を力で排除するのではなく、相手の欲求を満たす形で解消する知恵として読めます。

この章句が説くこと

司馬憙陰簡田簡中山処世

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