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戦国策 / 魏太子自將過宋外黃

魏太子自將,過宋外黃。外黃徐子曰:「臣有百戰百勝之術,太子能聽臣乎?」太子曰:「願聞之。」客曰:「固願效之。今太子自將攻齊,大勝并莒,則富不過有魏,而貴不益爲王。若戰不勝,則萬世無魏。此臣之百戰百勝之術也。」太子曰:「諾。請必從公之言而還。」客曰:「太子雖欲還,不得矣。彼利太子之戰攻,而欲滿其意者眾,太子雖欲還,恐不得矣。」太子上車請還。其御曰:「將出而還,與北同,不如遂行。」遂行。與齊人戰而死,卒不得魏。

新字:魏太子自将,過宋外黄。外黄徐子曰:「臣有百戦百勝之術,太子能聴臣乎?」太子曰:「願聞之。」客曰:「固願効之。今太子自将攻斉,大勝并莒,則富不過有魏,而貴不益為王。若戦不勝,則万世無魏。此臣之百戦百勝之術也。」太子曰:「諾。請必従公之言而還。」客曰:「太子雖欲還,不得矣。彼利太子之戦攻,而欲満其意者眾,太子雖欲還,恐不得矣。」太子上車請還。其御曰:「将出而還,与北同,不如遂行。」遂行。与斉人戦而死,卒不得魏。

書き下し

魏の太子自ら将たり、宋の外黄を過ぐ。外黄の徐子曰く、「臣に百戦百勝の術有り、太子能く臣に聴くか」と。太子曰く、「願わくは之を聞かん」と。客曰く、「固より之を効さんことを願う。今太子自ら将として斉を攻め、大いに勝ちて莒を并せば、則ち富は魏を有つに過ぎず、貴きは王為るに益さず。若し戦いて勝たざれば、則ち万世魏無からん。此れ臣の百戦百勝の術なり」と。太子曰く、「諾。請う必ず公の言に従いて還らん」と。客曰く、「太子還らんと欲すと雖も、得ざらん。彼太子の戦攻を利とし、其の意を満たさんと欲する者衆ければ、太子還らんと欲すと雖も、恐らくは得ざらん」と。太子車に上りて還らんことを請う。其の御曰く、「将に出でて還るは、北ぐると同じ。遂に行くに如かず」と。遂に行く。斉人と戦いて死し、卒に魏を得ず。

現代語訳

魏の太子が自ら将軍となって出陣し、宋の外黄を通過した。外黄の徐子という人物が言った。「私には百戦百勝の術があります。太子はそれをお聴きになりますか」。太子は「ぜひ聞かせてほしい」と答えた。客(徐子)は言った。「まさにお伝えしたいのです。いま太子が自ら将となって斉を攻め、大勝して莒を併合したとしても、富は魏を保有する以上のものにはならず、身分も王になる以上に貴くなることはありません。もし戦って勝てなければ、末永く魏の身は立ちゆかなくなります。これが私の言う百戦百勝の術(すなわち戦わずに帰ること)です」。太子は「わかった。必ずあなたの言葉に従って引き返そう」と答えた。客は言った。「太子は引き返そうとお思いになっても、そうはできないでしょう。太子の戦をあおり立て、自分たちの思惑を満たしたいと望む者が多いのです。太子が引き返したくても、おそらく叶わないでしょう」。太子は車に乗って引き返そうとした。すると御者が言った。「出陣しておいて引き返すのは、敗走するのと同じことです。このまま進軍するに越したことはありません」。そのまま進軍した太子は、斉軍と戦って戦死し、ついに魏の国も手にすることはなかった。

解説

この話は、魏の太子申が斉との戦いに自ら出陣し、外黄の徐子から「勝っても得るものは少なく、負ければすべてを失う」という冷静な損得計算を示されながらも、周囲の思惑に引きずられて後戻りできなくなり、最後には御者の一言で進軍を続け、戦死してしまう経緯を描いています。徐子の忠告そのものは正しく、太子も一度は受け入れましたが、すでに動き出した組織や、そこに利害を持つ者たちの圧力によって、個人の判断だけでは引き返せなくなる現実が示されています。物事を始める前にこそ損得を見極めるべきであり、いったん動き出した後では冷静な判断も実行に移せなくなるという、意思決定のタイミングの重要性を教える話です。

この章句が説くこと

魏太子外黄徐子百戦百勝意思決定退き際

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