戦国策 / 謂大尹曰
謂大尹曰:「君日長矣,自知政,則公無事。公不如令楚賀君之孝,則君不奪太后之事矣,則公常用宋矣。」
書き下し
大尹に謂いて曰く、「君日に長ず。自ら政を知らば、則ち公事無し。公は楚をして君の孝を賀せしむるに如かず。則ち君太后の事を奪わざらん。則ち公常に宋に用いられん」と。
現代語訳
ある人が大尹(宋の重臣)に言った。「君主は日々成長しておられる。ご自身で政治を執るようになれば、あなたの出番はなくなります。あなたは楚に働きかけて、君主の孝行ぶりを祝賀させるのが一番です。そうすれば君主は太后(母后)の政務を取り上げようとはしなくなります。そうすれば、あなたは変わらず宋で重用され続けるでしょう」。
解説
この短い話は、成長した若い君主が親政を始めれば、それまで太后を後ろ盾に権勢を握っていた重臣が実権を失うという政治力学を突いています。進言者は、君主の「孝」を大々的に称える演出を仕掛けることで、君主に「母を敬い政務を譲る」姿勢を保たせ、結果として太后側についていた大尹の地位を安泰にする策を授けました。徳目である「孝」を表向きの理由にしながら、実際には権力構造を維持する手段として利用している点に、戦国策らしい権謀術数の機微が表れています。組織における世代交代や権限移譲の場面で、美名の裏にある思惑を読み解く視点として参考になる逸話です。
この章句が説くこと
大尹孝太后権力処世
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